【追加公演決定!!】29日19時最高のおもてなし! 公演情報 ゴツプロ!「【追加公演決定!!】29日19時最高のおもてなし!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    米の飯
    戦争中海に沈んだ客船を舞台に、異なる時代の、だが志は同じ男たちが交差する。
    達者な役者陣がそろっているので面白くないはずはなく、芝居も濃いが感動も濃い。
    ただちょっと濃すぎて観ている私も肩に力が入り過ぎた。
    人の話を聞かない人々が集まって大声で「俺の話を聞け!」の繰り返し的な印象が残念。
    無口な浜谷康幸さんの表情が、複雑な心情を雄弁に語っていて一番感情移入した。
    ふくふくやで拝見した時もそうだったが、この人は台詞に依らない表現が素晴らしい。
    縁ある人々を引き寄せる不思議な船に魅せられた。


    ネタバレBOX

    舞台は客船の厨房兼従業員食堂(?)。
    戦時中に米軍の攻撃を受けて沈んだ竜王丸は、現代の技術で忠実に再現され、
    今日は記念すべきお披露目の日だ。
    ところが、沈んだ船から引き揚げられた古い大時計のあるこの厨房に
    時空を超えたもう一つの世界が現れる。
    それは攻撃を受けて沈む直前の竜王丸だった。
    昭和17年と現代、2つの世界のスタッフたちは、価値観の違いにとまどいながら
    事態を理解しようと悪戦苦闘する。
    彼らは誰に引き寄せられたのか、歴史を変えることは不可能なのか、誰が助かったのか、
    紛れ込んだライターの男は、パラレルワールドを変える要因にはならないのか?!

    なかなか理解し合えない2つの世界をひとつに結び付けるキーワードが
    「お客様に最高のおもてなしを」というプロの矜持であることが清々しい。
    仕事において自らに課したストイックな姿勢が、窮地に陥った時の拠り所となる。
    やがて沈む運命にあることが受け入れ難くて七転八倒する者も
    自分の存在が何かの形で受け継がれていくことを知って安堵の表情を浮かべる。
    自分の血縁者を見い出して人生の選択が間違っていなかったことを確信する者もいる。
    理不尽な人生の強制終了を告げられ、それを受け容れようとする過程が切なく悔しい。

    ハイテンションの台詞が飛び交う中で、浜谷さん演じる男は寡黙で言葉少ない。
    屈託のある人生を抱えて兄の勧めでこの船に乗り込み、ともに死んでいく運命を
    静かに受け止める。
    愛した人が自分の死後長く生きて、今孫と名乗る男が目の前にいるということを
    おそるおそる確かめながら喜びに浸っている姿に、思わず涙があふれた。
    家族を支えたのが、他ならぬ自分の書いた脚本を演じる浅草の役者仲間だったというのも
    大いに泣かせる。
    孫である現代のチーフを演じる塚原大助さんの、熱い台詞との相性が
    ここでは抜群に良かった。

    それにしても、「沈む前に一番おいしい飯を」、と万感の思いで白い飯を出したのに
    昭和17年組が「不味い…!」という予想外の反応で
    “いい話”にならない下りは面白かった。
    私たち日本人が戦後得たものは確かに大きいが、それと引き換えに失ったものも
    計り知れないほど大きいのだろうなと思った。

    当日パンフに大きく描かれている「竜王丸」の細密な絵、赤い色も鮮やかな絵が、
    出演していた中下元貴さんによるものと知って驚いた。
    船室一つひとつに、クルーたちと当時の日本人の精神が込められている。




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    2016/01/31 23:26

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