特別機動戦隊 J レンジャー 公演情報 ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン「特別機動戦隊 J レンジャー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ヘビー級の脚本にライト級の演出
    タイトルやチラシ(絵柄)からは想像できない骨太作品。当初は着ぐるみ笑(ショー)劇と思っていたが、それは大きな勘違いで印象が一転した。決して重厚・端正な作りという感じではない(失礼)が、底流にあるテーマの捉え方、その観せ方には驚いた。まさに自分好みの公演であった。劇中劇(映画製作)という客観的で同時進行するような展開が、相互に関連して立体的な公演になっている。その立ち上がった姿(テーマ)は、今の日本...いや戦後70年を経てまだ考え続けている課題・問題である。
    さらに、その存在によって起こり得る将来の問題も垣間見えるという、過去・現在・未来にわたる提起をしたような公演、観応えがあった。

    ネタバレBOX

    梗概は説明文を一部引用し「赤字の小さな映画製作会社が起死回生の一打として企画した映画。それは特別機動戦隊Jレンジャーの全面協力の下、女性隊員達の恋と友情を描く青春ラブコメディ・・のはずだった。しかし映画は思わぬ方向へ進んで行く。世界の平和と秩序を守るために、愛するものを守るために、戦え!特別機動戦隊Jレンジャー」という映画製作が、思わぬ現実に直面する。
    このJレンジャーは容易に自衛隊であることが想像できる。この組織広報局の対応が、国民の感情に寄り添ってということ。特定時期(観桜)に施設を開放し、地域住民との交流を図る。Jレンジャー(施設)の存在が地域経済の活性(雇用も含め)に繋がっている。なにより国(愛する人)を守るという使命感。
    その組織の全面支援を受けて製作する映画、脚本は従来依頼していた個人から、インターネット上にいる姿なき脚本家達(集団)に依頼する。その脚本家はネットユーザーの意見を反映し面白い(興行的に成功)ものへ都度変化する。この映画のために5人の女優がオーディションで集まり、Jレンジャーに体験入隊する。
    この訓練を通じて、女優たちはその性格、身体能力、経歴や悩み・希望・夢を語り出す。さらにJレンジャーという組織のあり方も考え出す。この考える姿こそ、観客に投げかけるもの。Jレンジャーの役割・必要性・生きがい・使命感等の肯定面、一方、不必要・危険・同盟国テロに関連したテロの標的という否定面が浮き彫りになるような各シーン。また少数の主張を押し込め、脅迫するような全体主義を下にした似非民主主義も感じる。

    この公演では多くの印象的な場面があるが、特に感じ入ったところ...。
    映画脚本の件、ネット上の作者(実態が不明)で多くのユーザー意見を取り入れる。興味を持つ多くの読者がいる反面、その内容には誰も責任を負わない。個人の意見がなく、極端な多数(全体)主義に危機感を持つ。そこに金のために行動していたプロデューサーも気づく。多数という中に隠れる無責任さ、怖さ。
    同盟国がテロから攻撃を受け出撃するが、J組織は犠牲者、それも隊のシンボル的な隊員が犠牲になることを望む。国民の憤りを煽り組織の存在・重要性を正当化できるかというもの。

    その舞台セットは、高さ30cm程の立方体が6個、八の字形に置かれている。ラスト近くに墓に見立てられ、そこに桜が舞い落ちるシーンは胸が痛い。TV子供番組の”○○レンジャー”のような赤いボディ・スーツがカッコ良いが、それは外見だけのこと。見た目ではなく、真に考えなくてはならないこととは...。

    2015年の安保法に絡め、当日パンフにある脚本家・堤 泰之 氏が「初演時(2014年9月)は、ちょうど集団的自衛権の問題が話題になりかけた頃でした。それがわずか1年半の間に、こんな形で法案が成立するとは・・・この国のことについて、今、目の前にある戦争について、観客の皆様と一緒に考えることができたら・・・」と。自分も同感でさらに混乱と混迷の世になったようだ。この公演、訴えたいところは明らかであることから、あざといと思うところもあるが、自分は素直に受け止めることにした。

    最後に女優陣の言葉...訓練中に傘を銃に見立てていたが、本当に傘で良かったと...。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2016/01/19 00:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大