どんとゆけ 公演情報 渡辺源四郎商店「どんとゆけ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    死刑執行をわが身に起こることとして考える
     死刑という重いテーマを真正面から扱いながら、笑いもふんだんに織り込んだ完成度の高い津軽弁芝居。被害者家族が加害者の死刑をその手で執行する「死刑執行員制度」という架空の設定が、見事に機能していました。

     加害者と被害者家族が死刑執行予定の現場で面と向かって言葉を交わすので、観客は死刑を身近なものとして受け取れるようになります。死刑執行員がいない場合は、その場に同席している拘置所職員が手を下すのが一目瞭然であることから、観客の想像力はおのずと日本で実際に行われている死刑にも及びます。死刑を描いた演劇はこれまでに数作拝見しましたが、ここまで周到な構成は初めて。

     じわじわと死刑執行へと迫っていく時間の中で、登場人物のバックグラウンドを少しずつ明かしながら、気持ちの変化を丁寧に描きます。役者さんの柔らかなコミュニケーションは、感情のリアリティがしっかりと伝わるものでした。

    ネタバレBOX

     死刑執行場所は死刑囚(高坂明生)の妻(工藤由佳子)の自宅。たたみの居間に集まったのは死刑囚とその妻、被害者の妻(工藤静香)と被害者の父(牧野慶一)、拘置所職員(ささきまこと)の5人です。一般市民が“死刑執行のしおり”に書かれた手順を実行していきます。死刑囚の最後の望み(トランプで「ゴニンカン」をやる)を叶えるという項目もあり、加害者と被害者家族が火花を散らしながら共同作業をするのがスリリング。

     被害者の妻は絶対に自分の手で死刑を成し遂げたい強硬派で、被害者の父の方は少し気持ちが揺らいでいる様子。拘置所職員が、死刑執行のボタンを押す公務から逃れるために大変な決断をしてきたこともわかり、死刑を執行するということの意味が肩にぐっとのしかかるような重圧感を持って伝わってきます。

     死刑囚は一見、改心して懺悔していたようでしたが、死を目前にして「逃げたい」「俺はまだ若いんだから」「パチンコがしたい」などと本音を垂れ流す様に、人間くささがほとばしり出ました。死刑囚の妻がすでに過去の恋人(?)を2人、自宅で看取っていた(おそらく殺害?)とわかるホラーな展開には爆笑。一筋縄ではいかない脚本です。
     オムライスが「とろとろ」か「ふわふわ」かで言い争うのは女のサガですよね(笑)。女同士の熾烈な舌戦を料理対決で見せたのも巧いと思います。

     最後に被害者の妻は、新しい恋人である職場の上司(畑澤聖悟)の反対をしりぞけて、躊躇していた舅とともに死刑を執行してしまいます。最近観た音楽劇で「愛のために人を殺しても、何も残らない」というセリフがあったんです。ちょっとクサいけど納得でした。それが被害者の妻に伝わったら良かったのにな~。でも作品のてん末としては、やはり死刑は執行されなければならなかったと思います。死刑を執行する人間も死刑囚同様に殺人者になるということを、観客に伝えるために。

     照明が大胆な配色で見ごたえがありました(オムライスを食べるときの照明が真っ赤だったり)。舞台中央奥の壁の絵に、その家にいる幽霊(おそらく死刑囚の妻が殺害した男2人)の顔が描かれていたそうです・・・怖っ!たたみの部屋の周囲には白く塗られた家財道具が山ほど並べてありました。かっこ良かったんですが、席によっては全く見えない人もいたようで、それは残念。

    2

    2008/11/05 00:21

    0

    0

  • こちらこそありがとうございました。そういえば乾杯の前にお話いたしましたよね。あの時も実のあるお話をたくさん聞くことができました。
    AGPは次々と新企画が生まれて活気がありますね。また来年お邪魔したいと思っています。よろしくお願いいたします。

    2008/11/05 11:24

    先日の公演ではお世話になりました。

    大胆な配色を意識したつもりで創った明りではありましたが、正直不安でいっぱいでした。
    乾杯前にしのぶさんとお話が出来た時にその件にふれて頂けて本当に救われた気分でした。
    有難うございました。

    今後、もっと自信を持って明かりを創れる様に精進して行きますので、何卒宜しくお願いします。

    2008/11/05 10:49

このページのQRコードです。

拡大