満足度★★★★★
プレヴュー
スゴイものを観た。この興奮をどう伝えればいいだろうか。関越道を往復4時間かけての観劇。帰路はいつも仮眠をとるのだが、今日はドライブインで1時間超の休憩をしたものの、興奮していて仮眠できなかったくらいだ。今年、これを超える作品に出会えるだろうか。効果スタッフが超一級だ。まず音響の腕前に鳥肌が立つ。音のいいコンサートホールでも感じたことのない音だ。靄のかかったような籠った音。霧が晴れた後の抜けるような青空に通ずるクリアな音。それらはまさに、山間の清流にある音だ。あの音世界の中に身を委ねてみてほしい。照明も素晴らしい。公演フライヤーをよく見ておくことを薦める。それが目の前に現れる。大きな器に入った水を突き抜けて、天井で踊るいくつかの光の輪が幻想的な美しさにクラクラする。作品世界に倒錯していく感覚に陥る。モデルを怪しく照らすキャンドルの明かりも効果的だ。キャストは4名。でも観客の頭の中にはたくさんの美しい女性が浮かび上がる。男が釣り上げたのは鱒なのか、それともオンナなのか? 鱒を見事な手さばきで調理したように、オンナを調理しているのか? 猟奇的な物語なのか? よくある男女の駆け引きか? 目撃してほしい。ミステリアスで官能的。視覚的にエロティシズムを感じるわけではないが、エロティックで大人の作品である。オトコが磨き上げてきた罠。彼は何を求めているのか。オンナは罠にかかったのか。騙しているのはオトコかオンナか。オトコは餌を使わずに疑似餌で勝負する。釣るのは?岡本健一さんは本当に素晴らしい舞台俳優だ。初めて魚を釣った時の記憶の独り語りの熱量はハンパない。また女優陣の南沢奈央さん、鬼頭典子さん、森尾舞さんの美しさに見惚れる。そして青木豪さんの演出は、グリングの活動時よりもキレ味が増した気がする。