田中さんの青空 公演情報 劇団CANプロ「田中さんの青空」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    労作…脚本・演出の妙あり
    タイトル「田中さんの青空」とは意味深であり、物語の世界に引き込むネーミングだ。その”田中さん“が気になったら既に物語の中にいる。始めは分割シーンばかりと思ったが、中盤以降にその意図が分かり驚いた。しっかり台割を行った上での脚本であり、観客の意識を刺激する。また演出は、カット・バックし取捨選択したシーンであることが分かる。映画と違い採用数が限定されていることから、脚本と演出は相当練り上げないと物語が伝わらないし、その面白さを組み取ってもらえないと思う。その点について、本作品は成功したと思う。
    さて田中さんは、徐々に姿が立ち上ってくるが、そこへの誘導が見事であった。さらに社会性も絡ませるが、そこにタイトルとの関連が…。

    ネタバレBOX

    約20年の歳月が流れるが、その経過はあまり感じない。映画におけるカット・バックを多用したようで、一瞬での場面転換を繰り返すため時間の流れを体感し難い。その代わり場面の繋がりは、断片的になるがその間は、観客の想像力をたくましくさせる。そのことは観客の受け止め方の違いだけ、想像力の幅が広がると思う。
    それゆえ、素舞台に近く、場面によって数個の整理箱が持ち込まれ、テーブル等に見立てたりするだけ。固定したイメージを持たせない演出である。また1場面に登場する人物も基本的には1名であるが、シ-ンによっては2名である。

    物語は、上演場面の順番を無視すれば、仲良し3人の女性が子連れでピクニック。その内の2組の夫婦の夫と妻が男女の仲になる。浮気している女が貴方の夫は浮気しそう...とその妻(妊娠中)に親切ごかしに言う。逆に浮気をされていた妻が浮気女を追い詰めて自殺させる。残された女の子(3歳)が冒頭シーンの偽痴漢騒ぎの女。田中さんは仲良しだったころに住んでいた町の(田中)洋装店の名前が通称になったようだ。本当の名前とその後の消息は不明。
    時代が流れ、痴漢呼ばわりされた男は会社を解雇され、今はカラオケ店のバイト。その店に毎週通いグループルームを借り一人カラオケに興じる女が痴漢騒ぎの本人。この女が「田中さん」を連呼する件から、田中さんに育てられたのかも...。エピローグとプロローグが逆転して邂逅するような繋がりは見事。

    田中さん自身を直接説明するのではなく、周囲の状況から人物像が浮かび上がるような手法は最近よく観かける。見え隠れする姿や場面転換による状況変化を想像する楽しさは演出の妙と言える。元脚本を分解(分割)し、再構築するという、印刷の台割のようであるが、どのように順序立てるか。そこがこの公演が面白くなるか否かの要諦であったと思う。その意味では巧く処理していたと思う。

    さてメッセージ...洋装店のマネキンが裸のまま、そして右腕がない、など差別・貧困や平和をイメージさせていることは明白であろう。その社会性を連想(政治関連に興味を持つ方は想像を膨らませるだろう)させる巧みさもある。案外、田中さんは傍にいて色々な事を見ている…明日も含め。

    チラシに「右腕がない絵柄」と黒人の子供の写真」などを一緒に掲載しているのはなぜか(劇中の台詞もあった)。驕りが透けて見えるようで気になるが...。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/11/29 22:05

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