ミュージカル『スコット&ゼルダ』 公演情報 ホリプロ「ミュージカル『スコット&ゼルダ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    才能ある男に惚れた女の弱みが哀切
    フィッツジェラルドの本は読んだ記憶がなく、ロバートレッドフォードの「華麗なるギャッツビー」しか、観たことのない人間なので、ウエンツさんのスコットが適任かどうかは、判断できないのですが、何となく、ゼルダ役の濱田さんとの釣り合いが取れないような印象を受けました。

    むしろ、中河内さんの方が、適任だったような気さえします。

    でも、ウエンツさんの歌声は胸に沁みました。

    コメディの方が向いていそうなウエンツさんですが、これからの舞台俳優としての成長に期待感を持たせる作品ではありました。

    濱田さんのゼルダは、本当に愛おしくなる可愛さに満ちていました。

    この作品の作家役の山西さんの存在感も、この作品に深みを増す要素になっていました。

    中河内さんを中心としたアンサンブルのダンスが、美しく、ゼルダの思い出話の陰影をうまく表出する効果絶大でした。

    才能ある男に惹かれて、自分を見失って行く、女の悲劇が哀切極まりなく、風前の灯のような美しさに、涙する観劇でした。

    ネタバレBOX

    ゼルダが入院中の精神病院が、彼女のスコットとの思い出話の度に、一瞬にして、幻想的な昔のシーンに切り替わる、舞台マジックが巧みでした。

    さすが、鈴木裕美さんの演出力!

    ウエンツさんのスコットは、もしかしたら、案外実像に近いのかもしれません。

    でも、「華麗なるギャッツビー」のイメージがあるので、井上さんとか城田さんの方が、相応しかったような気もします。
    台詞や歌はいいのに、立居振舞やダンスが、濱田さんには、引けを取ってしまうのが、観ていて、お気の毒な気さえしました。

    夫に、知らない内に日記を盗用されてしまうゼルダの困惑には、私も、身につまされる思いがありました。
    一部に異常な才能がある男は、とかく、他の面では、成長不良な性格をたくさん有していて、そういう男に惚れた女は、自分の存在を消して生きなければならないハンデを負いがちです。

    ゼルダを監禁しながら、「華麗なるギャッツビー」を執筆したというスコット。精神を病んで初めて、自分の小説を書けるようになったゼルダの悲哀。彼女が、精神病院の火事で命を落とした事実は、知らなかっただけに、衝撃でした。
    でも、どこかで、彼女は、偉大な小説家の妻としての人生を享受していたのかもしれません。

    「パッション」と言い、男と女の仲は、複雑怪奇なものだと、思い知らされた気がしました。

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    2015/10/31 20:17

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