満足度★★★★
生涯のレパートリー
一人芝居というのはとにかく凄いものである。渡辺美佐子の「化粧」を始め過去幾つかの一人芝居なるものを見た記憶を手繰ってみると、大俳優が悠然と演じたりファンサービスをやったりその俳優の得意技(歌とか)を披露したりと、手を変え品を変えて飽きさせない演出、緩急の妙がステージを支える。今回の「線路は続く・・」は俳優小宮孝泰の父がかつて所属していたという朝鮮半島の鉄道会社の「敗戦」翌日のシーンから始まる物語で、彼固有の演目と言える。この芝居では彼が一人何役もやる。まるで落語で、立ち芝居だから位置取りを変える時間のラグが生じるが、それも味わいで、鄭義信の脚本と演出の笑いとキレ、そしてたっぷりの情感を俳優小宮が自在にこなして演じる二時間。楽園の席は足がややつらかったが耐えきった。再々々演だという。大事に育てて発展させて行って欲しい。そしてまたお目見えしたい(本心から)。
2015/11/02 11:37