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雨湯口
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はりか「
雨湯口
」の観てきた!クチコミとコメント
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a(2)
満足度
★★★★★
遅くなりましたが
↓
ネタバレBOX
小劇場というところにあまり行ったことがなくて、どこからが小劇場でどこからが小劇場でないのか知らないのだけれど、入り口でお金を払って建物の横の細い道を通って裏から回るのは面白かった。中は薄暗く、ぼやっと10ワットの電球色のような落ち着いた明かりが灯っていて、簡素で真ん中に演者が囲む座卓、その周りに囲むように観客が座る椅子が並べ置かれていた。とても近い。この近さが全体的に強く影響を及ぼしたように後々思う。自分が座った場所よりもほんの少し遠い席も選ぶことは出来たから、そこではまた違った見え方がしたかもしれない。私の席ではすべての役者の顔を見ることが出来た。
近い、というのは演劇でも音楽のライブでも体験したことがあるが、例えば音楽のライブであればフロアの真ん中で演奏してその周りを観客が囲んで観る、というのがあるが、ちゃんと柵がある。他には小さなジャズバーでとても近い、ギターの先が顔に当たりそうなくらいの近さで鑑賞したこともあるが、よく見える、よく聴こえること、近くて“嬉しい”という以外のものはなかった。今回の演劇では役者と客をしきる境界が存在しなかった。
あらすじにも書いてあったが、民宿を営む実家に帰省した娘を母親は客として扱う。
それが、マジなのか病気なのかはその時は判然としないのだが、とても怖かった。その怖さを持続したまま、話は進む。後にそれは父親の失踪による“症状”であると説明されるのだが、それでも怖さは収まらなかった。ステージを観る、というのではなく、同じ舞台の上で、近くで見ている。障子に穴を開けてのぞき見しているような、超能力でその場を視認しているような、とにかくその場を同時体験しているような自分の入り方に、恐怖感を覚えていたように思う。ホラー映画でそろそろ何かが出ますよ、という恐怖感のボルテージを上げていき煽るシーンがあるが、あれがずっと持続されているようで、とても消耗した。
姉妹の置かれた境遇、人生の歩み方と選択の違い、その関係性と対比がきれいに描かれていたと思う。アサヒが父の失踪と母の変化を自らのせいと責めるシーンがあるが、マイはその時それに怒ると思った。父親の失踪を自らのせいだと思い、そこに残り母親と生きることは自己犠牲精神だが、罪は無い。失踪は車で当てられた事故のようなものだと思った。アサヒには徹底して罪がなく、自らを責め、マイをすごい、と言うのには欺瞞すら覚えた。しかしマイはそうではない、と庇い抱いて、その画がとても"丸い”と思った。比喩ではなく。二人はお互い自らの意志で入れ替わることを決意しているのもすごいと思った。
母親と父親の話も入っているし、講演内容には"母の記憶について”"母の恋人”"母の記憶”とある。登場人物には全員罪がない。同時に皆それぞれに強く持ち合わせている。とても難しい家族システムを描いていると思う。儀式、サクリファイスなどもきれいに入っていた。
動きでいえば、別の役者が話しているときに光の当たらない周りをゆっくり歩いたり、特に母親の動きは能のすり足のようだった。ただ、父親だけに動きがなかったように思う。
作者の阿部はりかさんのお芝居は今回で二度目だが、観るのにとても体力を使う。上演時間50分とのことだったが、とてもとても長く、感じた。前回は初めてだったがわりときちんと観ることが出来て、しかし何故か逆に、今回はとてもやられてしまった。一歩引いて観ることが出来ずに、消耗し、なかなか帰ってくることが出来なかった。
終演後の謎のポップなBGMにも、役者さんたちの一転した笑顔にも、心と身体がついていかなくてあべこべになってしまった。強烈でした。
一点、終盤のサイレンの音で想起を煽るのがあったが、それは少しチープで他の道はなかったかな、と思う。それまで緊迫したクローズドな場、一軒家で行われていたものが急に外界の存在を意識してしまった。海や川は暗闇で隠されていたわけだし。
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2015/10/08 23:53
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