満足度★★★★★
「月光条例〜カグヤ編〜」
昨日のお昼に、笹塚ファクトリーでカプセル兵団の「月光条例〜カグヤ編〜」を観て参りました。
原作の漫画もアニメも知らなかったし、カプセル兵団の舞台も初めてだし、月光編も観ていなかったけれど、存分に楽しめた舞台でした。
パフォーマーとして出演されている、笠川奈美さんから連絡を頂いて、観に行った舞台だったのですが、前から奈美さんからこの舞台の面白さを聞いていたので、ずっと観たいと思っていた舞台でもありました。
何十年かに一度、青き光に当てられたおとぎ話の登場人物たちが、おかしくなるという、ムーントラックが再び起き始め、おとぎ話の長老会は、おとぎ話を守るため、「青き月光でねじれたおとぎ話は、猛き月光で正せねばならない」という「月光条例」を作った。
その「月光条例」を執行する執行者が岩崎月光と工藤伽耶である。
子供の頃に慣れ親しんだ、一寸法師やあかずきんちゃん、シンデレラ、フランダースの犬、桃太郎などなど、ムーントラックで最初は暴走していた洋の東西、古今東西のおとぎ話の主人公たちが、月光たちに「月光条例」を執行されて、もとに戻り命を懸けて、月光たちと共におとぎ話をこの世から無くそうとするオオイミ王と戦う物語。
懐かしいおとぎ話の登場人物たち。母に読み聞かせて貰ったり、何度も読み返してきたおとぎ話の登場人物たちが、目の前で動き、走り、戦い、生き生きと飛び回るのを見ていると、何とも言えない懐かしさと高揚感に胸躍り、血が沸き返る。
舞台装置は何もないのに、舞台背景が立ち上ぼり見えて来る不思議な感覚。
物凄いスピードで登場人物と物語が進んで行く。音と光と音楽。それだけでこの壮大で可笑しなスペクタクルを目の前に、魔法のようにボンと出現させるのは、出演されている全ての役者さんたちがその人物としてそこにいるからであり、切れのあるスピード感のある動きの凄さでもある。
描かれているのは、信じること。自分を信じ、仲間を信じ、その信じること、信じる仲間を守るために戦う。人は、自分の為ではなく、大切なもの、大事な者を守るために戦う時、とてつもない強と愛を知り、その手に掴む事が出来る。
オオイミ王とて、病弱の幼馴染みの妻を守るために、誤った方向に舵をとり、方向を見誤ってしまっただけなのではないだろうか。
人の数だけ正義がある。立場が違えば見方も違う、何をもって正義と言い、何をもって悪というのかわからなくなってくる。けれど、厳然としてひとつあると言えば、何をどう言い繕っても、自分のエゴのために人の命と未来を犠牲にしてはならないとうこと。
その二つを守るために、月光たちは戦う。
信じることで人は強くなり、信じられることで人は強さを発揮できる。自分の道は自分で選ぶ、選んだからには言い訳しない。それとて、「信じる」から出来ること。
笑いながらも、最後は月光の言葉が胸に強く響き、涙が溢れる。
滑らかな場面転換、息を着かせぬアクション、壮大なスペクタクルでありながら、最高におかしくて、しっかりと心に響く物語がある、今までに見たことのない舞台。
鶴見直斗さんと金澤洋之さんの殺陣のかっこよさ、笠川奈美さんの躍りの強くてしなやかさも素敵でした。
畑中ハルさんの一寸法師と永澤菜教さんのきびだんごが、ツボに入ってすきでした。
奈美さんにお誘い頂いて、観に行けて本当に良かったと思った、最高の舞台でした。
文:麻美 雪