真珠の首飾り 公演情報 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場「真珠の首飾り」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    憲法に込めた、情熱を知る
    日本国憲法の草案を作ったGHQ民政局のベアテ・シロタのことはよく知られている。草案を作ったメンバーらがいかに情熱を傾けて作業をしたかを、ベアテを主人公に描いている。

    青年劇場は1998年の初演後も、何度も上演してきた。今回は、国会で安全保障関連法案が審議されているというタイミング。場合によっては自衛隊員が外国で戦争に加わるかもしれないという法案だけに、演劇界でも力が入っているのだ。

    語り手として、89歳となり今に生きるベアテ・シロタ・ゴードンを置き、45年当時のベアテに今回が初舞台の新人、高木アヤ乃を抜擢。彼女の堂々たる舞台は、注目に値すると思う。特に、第一幕の最後のシーンには、思わずもらい泣きしてしまう迫力があった。

    国家として戦争を放棄するという宣言をしたインパクトは大きかった。また、ベアテが日本在住での経験を基にして作り上げた「女性の人権」に関する条項は、画期的だった。憲法に込めた、メンバーたちの情熱を舞台は余すところなく伝えている。

    それで十分であるのだが、今回は締めくくりに、この70年間日本が戦争に参加せず、一人も殺さず、一人も殺されなかったのはこの憲法があったからだと現在のベアテがとうとうと語る。人によっては、この部分で舞台観劇の熱が冷めてしまったかもしれない。上演する側としては、今なぜこれをやるのかとアピールしたかったかもしれないが、ある意味、言わずもがなである。個人的には、なくてもよかったような気がする。

    後日談をやるのであれば、朝鮮戦争が起きる中で、米国が日本に対して、憲法の条文に手をつけずに警察予備隊(自衛隊)を作らせたことも含めた方がよかったのではないか。事実上の軍隊を「自衛隊」として軍隊ではないから憲法9条に違反しない、という論理は、「軍事を使ってでも積極的に守る」のが「平和」だと言い張っている今の政権のやり口とまったく同じなのだから。

    それでも、憲法の成り立ちに疎い、特に若い人にはお勧めしたい。「平和」は努力しないと守られないということを知るためにも。

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    2015/09/12 19:17

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