満足度★★★★
快感にくるまれた冷や汗
冒頭のビーチのシーンに、まずは引き込まれる。これから何が展開するかという派手なワクワク感だが、終わってみると、ある意味、これが今のところ「平和」な現在だと引き戻されるという感じか。
日本を2分する内戦が起きて恋人が引き裂かれるという深刻な物語。記者会見で軍の高官が「それは秘密保護法に抵触するので申し上げられない」と答えたり、「悠久の大河に生きる」という趣旨の、先の戦争で国に殉じた人たちの言葉が真顔で語られたり、今の時代では相当現実感をもって迫ってくる場面が次々に登場する。これが現実になるかも、近い将来なるだろう、という冷や汗を舞台は否応なく突きつける。
だが、その冷や汗は軽妙なタッチと「快感」によってパクッと包まれる。冒頭のビーチが今のところはちゃんと現実なんだ、と冷や汗が遠のいていくのだ。
鴻上尚史さんの3年ぶりの新作。さすがだな、と感じ入る。
余計なことですが。
佃井皆美だけでない、若手女優さんたちの手足の長さに目を見張る舞台でもあった。