JANIS 公演情報 DULL-COLORED POP「JANIS」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    これが私の好きなDCPOPだ。
    史上最高の女性ロック・シンガー。ブルース・ロックの女王。あだ名は「パール」。ジャニス・ジョプリン。(チラシより)

    恥ずかしながら私は、この芝居の題材となっているジャニス・ジョプリン、全く知らなかったのです。
    が、チラシに書いてある文章にさらっと目を通して芝居を観て劇場を出るとあら不思議。
    帰り道にジャニスのCD探してみようかしら、そんな気にさせられます。

    ジャニスが大好きだという作・演出の谷賢一。彼の、惜しみ無い、だけどちょっぴりひねくれたジャニスへの愛がビリビリと空気を震わせ、ハートの奥に響いてくる芝居だった。

    今回の目玉である演劇×ロックバンド生演奏。効果的という言葉では収まらないが、とにかく良い。

    ネタバレBOX

    ジャニスの孤独が、生き様が、ドラム・ベースの響きとなり地を震わせ、ギターが空を切り裂き、そしてジャニス(=武井翔子)の歌声が劇場を満たす。
    マイクを握り、自らの孤独と正面から格闘するようなジャニスのパフォーマンスに、ジャニスの瞳に、鳥肌が立った。
    バンドメンバーが繰り広げる会話にはこちらも引き込まれて、客席からは笑いが、拍手が自然と飛び出す。
    芝居自体が、こういった観客の参加を積極的に楽しもうとしている懐の深い仕掛けを持っている。
    ジャニスにばかり目が行きがちだが、バンドを聴いている観客の姿も、これまた芝居として楽しめるのではなかろうか。『JANIS』を観に来た観客、そして、劇中でのジャニスライブの観客、この全てをひっくるめた『JANIS』を一番楽しんでいるのが作・演出の谷賢一だろう。最高の観客席だなおい。
    バーカウンターからジャニスのライブを眺めるリンダ(=堀奈津美)の姿にしびれる。
    DCPOPの芝居で微妙なバランスをいつも支えているのはやはりこの人・堀奈津美だろう。
    今回はジャニスのビジネスパートナー・リンダの、もろくて神経質な、しかし誰よりもジャニスを愛している様を渋く魅せてくれた。
    そして劇中では最も異質な存在・ベルボーイ(=清水那保)が、傷口に塩をぬりたくる形でジャニスの孤独をまざまざと描き出す。
    堀がバランサーなら清水は起爆剤だろうか。



    観客がジャニスの世界に引き込まれたのか、はたまたジャニスが現代に一夜限りのステージを披露しにやってきたのか。
    この、観客と舞台とを違和感なく融和させる空気づくり・空間づくりが今回、最高にシビれた。
    客と舞台の融和に大きく貢献しているバーのマスター、バーナード・ワイズマン(=影山慎二)が、ジャニスの孤独を、観客席を暖かく、しかし決定的に距離を置いた形で見守る。
    次々にレコードを紹介する彼の姿には、二作目『ラパン・アジルと白の時代』でユトリロの美術館へと観客を誘った主宰・谷賢一の姿がだぶって見えた。

    ユトリロに続く形になるのか、実在の人物に焦点を当て鮮やかに孤独をえぐり出すこの形式。
    気は早いが、次回は誰をクローズアップするのか、今から楽しみである。

    この『JANIS -LOVE IS LIKE A BALL AND CHAIN-』、個人的には今までで一番好きかな。もちろん色々ジャンルが違うから同じ基準では比べられないけど。
    谷賢一のロックな演劇パワーが、奔放で孤独なジャニスを通して、痛いくらいに溢れだしているように思えました。
    このパワーこそが、やっぱ演劇なんだと思うのです。
    このDCPOPの演劇パワーに、自分は惹かれているのだなと。
    これが、僕の好きな演劇です。

    オススメです。皆さん、ぜひ観てください。

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    2008/10/10 21:42

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