満足度★★★★
陰影あるキャラに魅了される
改めて脚本の素晴らしさを思い知らされる舞台だった。
吉祥寺シアターの高さのある空間、舞台の穴を上手く利用した設定も効果的だ。
複雑で深い陰影を見せる登場人物が実に魅力的。
異形の者、ゴベリンドンのなんと愚かしく哀しい、孤独な姿だろう。
高橋倫平という役者の身体能力を100%生かした動きが、彼の苦悩をリアルに体現する。
欲と孤独がミルフィーユのように層を成す“死体洗いのザビー”(さひがしジュンペイ)、
弟に呼びかける第一声が、もう既に愛情と苦悩に満ちている兄トシモリ(藤井としもり)、
運命を告げる慈愛に満ちた“沼の精”(わかばやしめぐみ)の歌声は、
一瞬で劇場の空気をミステリアスな色に変える。
そして無邪気な弟(末原拓馬)は、最後に究極の選択をして“大人になる”…。
“あの感動をもう一度”、という意味では確かに成功している。
分かっていてもやっぱり泣けてしまう。
だがあの“なんだ、この廃工場でやってる芝居は!”という驚きは鳴りを潜めた感があって、
そこが大きくなった劇団に共通の課題なのだろうと思う。
再現の一歩先を見せて欲しい、という我儘と期待感で★は4.5とします。