透明人間 公演情報 劇団唐組「透明人間」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    良かった
    2006年の再演を観ていますが、その時と違った印象を作品から受けた。たぶん、時代背景が変わったことによって、私が作品から感受するものが変わったという部分が大きいように思う。その点も、とても興味深かった。

    稲荷卓央さんが良かった。

    ネタバレBOX

    「90年代唐十郎の最高傑作」とチラシにもある通り、何度も再演されている作品。
    詳細は→ http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=24127&id=9171315
    私は2006年に観て衝撃を受けた。
    今まで私が観た唐組の芝居で一番感銘を受けたのがこの作品だと思う。

    今回観て、前回観た時とだいぶ違った印象を持った。
    それは役者や演技、演出が違うという部分も勿論あるが、
    その点以上に、公演される時代背景によって、作品の問いかけるものが違って見えるという部分。
    そもそも唐十郎氏の戯曲は、いかようにもその作品の意味を解釈できる。物語の起承転結は明確ではなく、イメージが変幻自在に移ろいゆく。演出に於いても、作品の意味を伝達するというよりも、物語や言葉を食い破る役者の身体(特権的肉体)の提示に力点が置かれている(その点は久保井研さんの演出になっても変わらない)。
    だから、私が感じた部分が意図的に強調されている訳ではない。社会状況に関心のない人ならば、私が感じた部分には少しも意識が行かなかった可能性もある。そういう観客は、私とは別の部分の問題を、自分の興味に応じて感じ・考えながら作品を見るのであって、それはそれで良いと思う。それだけ開かれた作品だということ。
    私が今回の上演で一番感じたのは、この作品が中国での日本の戦争の歴史を引きずっているということ。と言っても、その解釈はうまく言葉にできない。繰り返しテーマとして出てきながらも、それがどういう意味持っているのか、何を問いかけているのかは明示されないからだ。おそらく、唐十郎氏自身でも、明確に言語化できるものでもないのかもしれない。完全な無意識だけで、これだけの戯曲がまとまる訳もなく、ある程度は意識的に描き込まれたテーマでもあるのだとも思うが、そこから先は無意識の領域。それは観客の領域に開かれる。作者の無意識は、観客の無意識と混じり合い、日本の、中国の、人間の歴史・記憶へと連結する。
    観客である私は、自分がこの作品で感じたものの意味を、これからの生活の中で考えていくしかない。うまく言葉にできない。
    うまく思考がまとまったら、また書くかもしれません。
    中途半端な感想で、すみません。
    いずれにせよ、何かを問いかけられる作品というのは素晴らしい。

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    2015/05/10 23:09

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