女中たち 公演情報 企画グループHOURRA!「女中たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    狂気
    奥様の留守に“奥様と召使いごっこ”をする姉妹の女中。次第にエスカレートするその遊びが、ついに危険な領域に踏み込んでいく…というジャン・ジュネの戯曲。クラシックな香り漂う豪華なセットや衣装が素敵。“狂気”の出どころは、犯罪と放浪の果てに“塀の中”で書き上げた作品が認められて世に出たジャン・ジュネという作家の特異性にあるのかもしれない。

    ネタバレBOX

    ベッドやその周囲の調度品、ドレッサーやハンガーの衣装がキラキラと豪華。
    やがてここで高慢な奥様と、それに仕える女中のやり取りが始まる。
    が、実はこれ、奥様の留守に姉妹の女中ソランジュ(さひがしジュンペイ)と
    クレール(林勇輔)が興じる“ごっこ遊び”なのだ。
    二人はこれで日頃のうっぷんを晴らしている。
    お遊びは次第にエスカレートし、クレールの虚偽の告発により
    旦那様は警察に逮捕されている。
    勝ち誇ったのもつかの間、その旦那様からの電話で保釈されたことを知ると一転、
    今度はクレールの仕業であることが発覚することを恐れ、生きた心地もしない。
    ソランジュは奥様を殺そうとと毒入りのハーブティーを用意するが、それに手を付けず
    奥様(岩崎加根子)は嬉々として夫を迎えに出ていく。
    絶望したクレールは、その毒入りハーブティーを飲み干すのだった…。

    煽るソランジュの台詞、それを受けて実行へ突き進むクレールという対比が面白い。
    ソランジュの罵り方が激しいのは、実行に移せない自分へのもどかしさもあるのか。
    見た目も繊細で、一方的に翻弄されているように見えながら、偽の告発文を書くのも
    毒をあおるのもクレールである。
    社会的な格差や上下関係、持つ者と持たざる者、といったどうしようもない現実に対する
    不満や怒りが、2人の台詞の相乗効果で雪だるま式に膨らみついには壁に激突する感じ。

    さひがしジュンペイさんのソランジュは、息切れせずに煽り続けてパワフルだが
    どこかに虚しさや妹クレールの暴走を怖れる気持ちが感じられたら、もっと奥行が出た。
    林勇輔さん、姉に引きずられているように見えて実はこの状況を変えるためなら
    何でもやってやるという切羽詰まった感が繊細な表情の中によく出ていた。
    ベテラン岩崎加根子さん、そんなに憎まれなければならない奥様には見えないが
    その存在自体が反感を買う対象となっている天然の“勝ち組”感が上手い。

    こういう古典的な戯曲は、時代が変わると予備知識なしには理解が難しい部分を持つ。
    例えばこの作品の「憎悪の理由」など、作者の経歴や時代背景が分かると
    理解の深さも変わってくる。
    私はまだまだ勉強も経験も足りないし、もっといろんなことを知りたいなあと思った。

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    2015/04/08 01:46

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