オムニバス of Oi Oi vol5 公演情報 Oi-SCALE「オムニバス of Oi Oi vol5」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    サクラに棲むものたち Bブログラム
    「サクラ」をテーマに1本30分が3本というオムニバス。
    林灰二さんが他人の脚本をどう演出するのか観たくてBプログラムを拝見。
    「きつめ」のキャラ設定が面白かった。笑っているうちに一種ホラーな結末が新鮮。
    「サクラカレー」いわくつきの公園でカレーの移動販売を始めた夫婦が恐ろしくも可笑しな出来事に巻き込まれる。最後は人情噺?
    「君が頷く作文」は林灰二さんの脚本・演出がユニーク。毎回どこかシュールな香りがする作品を意外な表現方法で提示するその“ウケを狙わない”姿勢が好き。風貌も淡々としているけど、表現に関してはとても攻撃的な人なんじゃないかと思う。

    ネタバレBOX

    Oi-SCALEではおなじみのコーン型照明が立っているだけの舞台、
    正面の白い布がスクリーンになっていてタイトルが映し出される。

    1. 「きつめ」   脚本:羽生生純 演出:林灰二
    漫画家だが収入のために舞台の脚本も請け負った男(林灰二)は、
    子どもがほしいな、と妻に言っても「お金がないでしょ」と言われる始末。
    ネタ探しに出かけた公園で風変わりな女「きつめ」に出会う。
    やがて男は桜の木に取り込まれてしまう…。

    「木」「ツ」「女(め)」を合わせると「桜」という漢字になるというのが面白い。
    前半のユルイ展開から一転、ホラー映画の如く「樹木」に取り込まれていく描写が新鮮。
    もっと「きつめ」のキャラがミステリアスだったら(エキセントリックでなく)、
    魅入られた男に共感できたと思う。

    2. 「サクラカレー」   脚本:岩崎う大 演出:林灰二
    とある公園の桜の巨木の下でカレーの移動販売を始めた夫婦。
    立派な桜が満開なのに人気のない公園、訝しく思っているうちに妙な人々がやってくる。
    以前ここでホームレスだった男や、心中に失敗して生き残った男である。
    ここが昔から「う○こ塚」と呼ばれていることや、心中に失敗したカップルのうち
    死んだ女の父親が、自宅の桜を植えたのがこの桜の木であることがわかる。
    と、いきなりその心中で死んだ女がカレーの台の下から登場、
    生き残った片割れにエールを送り、
    周囲の人々に協力を依頼してあの世へと帰っていく…。

    濃いキャラに翻弄される夫婦の足元から女ユーレイが出てきたときは笑った。
    演じているのが男だし。
    めそめそする生き残りを叱咤激励して、そこにいる全員を巻き込んで
    「じゃ、よろしく」みたいな引き揚げ方が可笑しい。
    ユーレイのキャラがさばさばしているところがよい。
    もっと早くユーレイが出てきてたっぷり心中の話をした方が面白い気がする。
    心中に至るしんみりした理由が明かされたりしたら
    “笑ってるうちにいい噺”になったかな。

    3. 「君が頷く作文」   脚本・演出:林灰二
    大きな植木鉢を引きずりながらそれに水をやり、世話をする妹。
    兄はそんな妹を気遣っている。
    やがて植木鉢から芽がでて育ち始め、桜になる…。

    作文を読むような朗読劇(?)。台詞ではない、淡々とした描写に
    コミュニケーションの隔たりとか、伝わりにくさとか、孤立感が漂う。
    林灰二さんは言葉を操る仕事をしながら、どこかで言葉の限界を感じているように見える。
    少し突き放したようなところから社会を眺めるスタンスを感じさせる。
    都会的で、冷めた手法にそれが表れていると感じた。

    個人的な好みを言えば、その都会的で冷めたコミュニケーションの一方で
    爆発するような感情を一触即発状態でため込んでいる現代人を描く
    林さんの作品の方が好き。
    例えば数少ない観劇の中では「武器と羽」みたいな。
    そしてやはり私は、林さんが出演する舞台が観たい、と改めて思った。
    この人の演出は、出演することで完成するような気がするから。

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    2015/04/07 22:33

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