悪い冗談 公演情報 アマヤドリ「悪い冗談」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    配置の妙/約110分
     置きチラシに入っていた挨拶文で作・演出の広田さんが自ら認めていた通り、事前に予告されたものとはずいぶん趣の違う内容になっていたが、犯罪者という特別な人達の悪に迫った一作目と二作目に対し、今作では“誰もが不可避的に抱え込む悪”、さらには“国をはじめあらゆる組織が必然的に抱え込む悪”、つまりは“悪の普遍性”にまで踏み込んだ内容になっていて、「悪と自由」三部作の掉尾を飾るにふさわしい作品になっていたと思う。

     見せ方としては、この“悪の普遍性”を示すエピソードを極大のものから極小のものまで、合間にダンスなど挟みつつ大した脈絡もつけないまま舞台上に配置してゆくスタイル。
     この“配置”が作り出す絵ヅラがおそろしく美しく、また、この“配置”の妙により様々な記憶や思念が脳内に喚起され、退屈するということが一度もないまま二時間近くが過ぎていった。

     力強いモノローグとものものしい音響・照明によって織り成された、東京大空襲のくだりが圧巻でした

    ネタバレBOX

     芝居の観方は時局に左右される。
     このことを強く思い知らされた公演でもあった。

     本作ではアジア諸民族の宥和がダンスその他によって表現されるが、三原じゅん子議員の「八紘一宇」発言がなされた直後に観たために、“アジアは一つ”とでも言いたげな諸シーンがなんだか胡散臭く思えてしまった。
    「宥和」はある一国の主導のもとになされた場合、それは一国による諸国の「支配」へと容易に変じうる。

     また、日本、韓国、台湾と、国籍を異にする俳優たちが握手を交わすシーンで流れる有名な歌は、二度目の東京オリンピックが近い今、私の耳にとても皮肉っぽく響いた。

     “世界は一家、人類はみな兄弟!”と訴えているかのようなその歌。
     だが、この国は微笑を浮かべながら世界に対して両手を広げる一方で、足では国内の諸地域を踏みつけにし、国からどんどん一体感を奪いつつある。
     国際協調を訴えるより、まずは自国をまとめることが先決なのではないだろうか?
     歌い手がもし今も生きていたら、きっと同じことを思ったに違いない。

     あの歌が皮肉めいて聞こえることは、たぶん、作・演出家の計算のうちだったのではないだろうか?
     
     

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    2015/03/30 13:44

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