ハムレット 公演情報 新宿梁山泊「ハムレット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    古典との最も良い距離感覚
    「ハムレット」を堪能した。劇団アトリエ「芝居砦満天星」の決して広くない制約ある空間をフルに駆使し、華麗で自在な場面転換で息付く間もなくドラマが展開する。この梁山泊版ハムレットの、何が蠱惑的に味わいあるものに押し上げているか、うまく説明できないが・・役者の佇まいが良く、妙に現代的翻案やギャグを多用したりせず、原典に忠実に見せながら、どこかドラマとの距離をとっている点かも知れない。
    驚きは音楽の選定で、劇中歌と一部の音楽以外は頻繁にある外国のフォークグループの曲が流れ、劇との一致感は無いが邪魔もしておらず、奇妙なバランスの中で芝居が進む。これにモードチェンジ達者な役者の演技と華麗な場転が相俟って絶妙。
    演技面では、哀れな運命を辿るローゼンクランツとギルデンスターンのハムレットとの心の距離、他の家臣との中間的な距離、ホレーシオとの親密な距離が(恐らく台詞はうまく刈られていたと思うが)何気ない動作の中に表されている。キャラ作りの点では劇中で死に至るポローニアスが、機敏な動作を台詞の装飾にした表現で、笑える。もっともそれは彼の子、兄レアティーズと妹オフィーリアとの深い家庭愛の誇張された表現として裏打ちされていて、この二人が後にハムレットと対峙する局面でそれが効いて来る(レアティーズの出立の日にオフィーリアをまじえて交わされるやりとりは見事)。金守珍の亡霊(父)も深刻さのカリカチュアが突き抜けて、笑える。他も同様に熱の入った演技でつい「笑」の轍に滑りそうになるがそれを制止させるのは役者の顔力か。もちろん客はドラマの帰趨を(たとえ話の筋を知っていても、否知っていれば尚)追わずには行かなくなっている。オフィーリアの悲劇の瞬間が本舞台最高の音響レベル。狂気への変貌ぶりも(衣裳・演技とも)うまい。戯曲の最後に書かれた台詞を語る松田洋治のホレーシオがその場に佇む中、死者達が終幕への流れを作る。見事なラストで、アングラを出自とする劇団の面目躍如という感じもかすめた。
    ハムレットの広島光、やや口跡に難あるがそれを補って余りあったのは、まっすぐな心そのままの真情吐露が見てとれる身体、観客に近い所に唯一存在して「ある悲劇の主人公」を生き切った。
    劇場について一言。住宅街の中にある大型集合住宅の地下に作られた「芝居砦満天星」だが、表に看板や案内はない(貼るのは禁止だそうだ)。マンションの表と裏で高低差があり、高い方(お寺の敷地に近い方)の道と地続きの入口扉を開けて階段室に入ると、控えめに「満天星⇒」とA4の紙が貼られてある。外側に目印は無いのでご注意を。

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    2015/02/22 10:24

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