満足度★★★
切り詰められた表現
シンプルながらも洗練されたヴィジュアル表現が印象的な、70分程度に圧縮された『人形の家』でした。
大幅にカットされてはいるものの戯曲通りに展開し、仮装舞踏会の衣装や手紙といった小道具は一切用いない構成・演出で、『人形の家』を知っている人でないと少々分かり作りとなっていました。
時代がかったデコラティヴなプロセニアムに囲まれたステージからファッションショウのランウェイのように通路が客席の上に張り出し、その先端に小屋のフレームが建ち、舞台奥にはグランドピアノが置かれた中で、感情を乗せない人工的な緩急を付けた台詞回しで対話の台詞もモノローグのように語り、動きは非常にゆっくりで、独特の雰囲気を生み出していました。
最後のノーラとトルヴァルのシーンになってようやく向き合って対話らしく話すのが印象的でした。
講堂の備え付けのブザーが鳴る度に全身黒の衣装の役者5人が横一列に並び、照明が一段階ずつ落ちていく表現は戯曲との関係は良く分かりませんでしたが、会場設備の使い方としては独創的で面白かったです。
通常の入口から入るのではなく、2階客席から舞台裏を通って1階客席へ案内されましたが、そのことが建物ツアーとしてしか機能していなくて、作品との関連が見えて来なかったのが勿体なく感じました。
講堂の外のノイズがうるさくて、台詞が聞き取りに難かったのが残念でした。