満足度★★★★
二律背反の男
「高級将校(しかも軍医の最高位)」 と 「いささか反体制的な視点まで持ち合わす文学者」・・・という極端な二面性が内在する森鷗外。その両極端の共存を許し、しかもその存在を両社会に許されるという・・・ その絶妙なバランスは、決して強い人間故成しえたのではなく、むしろ臆病で弱く、人間臭い、小心者だったからこその業だったと感じました。
母と妻、反体制の編集者と体制派の旧友、常に対立する人間関係に挟まれながら立ち回り、その双方から愛される・・・ 全てのシチュエーションが彼の二面性を象徴していました。
これといって斬新な展開があるわけではありませんが、心理描写を緻密に魅せる脚本・演出、それを支える上質な演技をたっぷり味あわせてもらいました。