満足度★★★★
堀川流のケレン味を控えめにし、割合真っ直ぐな演出で原戯曲の倫理観をきちんと表現/約120分
不条理劇と称されがちな別役劇だが、本作は不条理劇の装いをした人間ドラマ。
どこか寒々しい他の多くの別役作品と違い、本作には人肌の温もりが感じられる。
それを堀川炎が持ち味のケレン味を抑え気味にし、割合ストレートな演出で端正に表現。
結果、原戯曲の持つ独特の倫理観がきちんと伝わる好編に仕上がっていて、私は満足。
主役の姉弟の姉役を演じた百花亜希の実直な演技にも好感。
ただ、1968年の作とあって風俗描写などに古めかしさのある本作に、何人かいるイマ風の見てくれの俳優は不似合い。ここは、現代性も古さも感じさせないニュートラルで没時代的なスタイリングやヘアメイクを模索して欲しかったところ。
また、世田谷シルク用語で言うところのオドリコの起用法が適切でないシーンがあることも惜しまれる。
本作には堀川さんにより独自の枠付けがなされているが、その枠を食い破るような力強さが、別役作の原戯曲には感じられた。