満足度★★★★
モラトリアムから現実社会へ
大学時代の楽しい生活から、卒業して直面した厳しい現実。その後、学生時代の友人との有り触れた付き合いを坦々と描いた話。大学時代は自由気ままな生活を送っていても、社会人になると思い描いていた理想とは程遠い思いをする。まさしく「理想」は「現実」に取って代わられる。そのギャップが大きいほど、社会で生きるには厳しい思いをするだろう。
何の変哲もない日常生活、いつの間にか沈殿してくる澱のようなものが精神を蝕んでいく。そのじわりじわりと追い込まれていく狂気が上手く表現されていた。
その病んだ心を、歪になった舞台セットで表現したのだろうか。客席前列からだと意味なく上方へせり上がったように見えるだろう。客席後方からは、屋上から街を眺める、または飛び降りるというイメージを持たせる。意識しないうちに迫り来る不安・恐怖が不思議と伝わる公演であった。
そう、フライヤーにある乾いた風景に生身の人間が写り込む…そこが現実なのだと主張しているかのようだ。
次回公演は、モラトリアム人間から力強く踏み出し、人間ドラマを期待しております。