背信 公演情報 葛河思潮社「背信」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    アル中の妄想か
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    ハロルドピンターの【背信】を観劇。

    演出は長塚圭史。

    出版社社長(長塚圭史)、編集者(田中哲司)、画廊のオーナー(松雪泰子)の3人のみの登場人物だ。

    長塚圭史と田中哲司は長年の親友であり、長塚圭史と松雪泰子は夫婦である。そして松雪泰子と田中哲司の長年の不倫関係の終えんから話しは始まり、そして二人の初々しい出会いの頃に戻りながら展開していくのである。
    ここで描かれる夫婦は、既に不倫を容認していながら生活を送っている家庭が描かれている。
    そこでの男女は決して取り乱さず、冷静に立場をわきまえていながら、互いに憎んだり罵ったりはせずにいる事が、何とも腑に落ちないというところだ。宗教観の違いか?価値観の違いか?などと勘ぐってみるのだが、それでは全くないようだ。妻や夫が背信行為をしている事に対して、夫婦自らが互いの問題点を言及せずに、それがあたかもこれこそが正しいイギリス人の夫婦生活の在り方であり、他人同士が長い期間に渡って一緒に生活する方法であるという奇妙な考えに浸っていて、それは己に対して正しいな感情ではない、まさしく自分自身に嘘をついている、それこそがタイトルの背信だと言っているような気がしてならない。他人に対する背信を匂わせておきながら、実は自分自身に対して背信しているという事が今作のタイトルの意味であり、テーマではなかろうか?
    この解釈が正しいかどうか分からないが、ハロルドピンターを理解するにはこういう事かもしれない。
    背景にベルディーのオテロが流れていたり、長塚圭史と田中哲司の芝居は、常に一面の部分しか見せないのに対して、唯一、松雪泰子のみが状況に応じて、いろいろな表情を作ってきている事が、長塚圭史がハロルドピンターの戯曲のテーマに対してのアンチテーゼではないかと思う。

    現在の最高の舞台女優の大竹しのぶ、宮沢りえ、松たか子は、常に戯曲を頭脳ではなく、肉体で解釈する(特権的肉体論)の演技法だが、
    松雪泰子は頭脳で解釈して、そして頭脳で演じる。その後に身体が付いてくるという変わった演技法だ。
    それはアクション満載の劇団・新感線で演じていた時もそうだった。
    多分、彼女の中ではベストな芝居かもしれない。
    (因みに個人的には、松雪泰子の事は全く知りません)

    観劇後は煙に巻かれた感はあるかもしれないが、少しだけお勧め。

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    2014/09/20 10:12

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