満足度★★★
今を生きる
小栗判官と照手姫の物語を室内オペラにした作品で、単純に物語を演じるだけではなく、冒頭と最後に物語を相対化して現在の人間の置かれた状況を考えさせる場面があり、作品に深みが出ていました。
前半では小栗と照手が出会って結ばれるものの、2人の結婚を良く思わない照手の父によって小栗が殺されるまでが、語り部が時折現れて語っているという形で描かれていました。休憩を挟んだ後半は餓鬼阿弥陀仏として車で引かれ、お互いがそれと気付かずに出会うシーンが印象的でした。
グレーに統一された屏風状の壁、傾斜のついた台、階段のミニマルな空間の中で、しっかり作られた衣装や衣装やリアルな蛇や馬の作り物が映えていて印象的でした。
舞台の上手に位置するピアノ、サックス、打楽器の伴奏に乗せて歌われる曲はことさらに和風に寄せ過ぎず、程良くモダンな響きがして聴き易かったです。小栗が乗る車を引く掛け声に基づくリズムモティーフが所々に現れて統一感を与えていましたが、反面、単調さも感じられて音楽としては少々盛り上がりに欠けると思いました。