HOTEL CALL AT 公演情報 メガバックスコレクション「HOTEL CALL AT」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    いつか行くホテル
    第25回池袋演劇祭「優秀賞」受賞による公演ということで代表作を観る機会が得られた。
    小さい劇場で舞台いっぱいに作り込むいつものセットも迫力あるが、
    こういう大きな空間を100%活かす作品の選択、高低差と奥行きのあるセット、
    空間を飾る豪華な衣装、ドラマチックな照明と、まずその舞台作りが素晴らしい。
    早い段階でタネ明かしをした後の展開に深みがあり、そこはメガバの真骨頂だが、
    一方軽妙な笑いも散りばめられていて、そのバランスが秀逸。

    ネタバレBOX

    入口で背の高い青い髪の男性に「ようこそ」と迎えられた時から
    メガバ・ワールドは始まっていた。
    彼の足元には酔っ払いのような男がひとりごろんと横になっている。
    客席の後ろの方で「ごめん遊ばせ、ここより後ろの席は全て買い取っておりますの」
    という張りのある声が何度か響く。
    舞台上では白塗りの男がトランプタワーに挑戦している…。
    客席に混じった出演者のキャラが自然に伝わってくる客入れの演出が巧み。
    そして青い髪の男が、このホテルの主トライアラスキー伯爵であることが判る。

    トライアラスキー伯爵(キリマンジャロ伊藤)と
    その右腕フェイズランド(野口広之)が取り仕切るこの「HOTEL CALL AT」に
    今夜は8人の団体客が来る。
    彼らは皆同じバスに乗り合わせた客たちだったが
    やがて驚愕の事実が明らかになると、客たちはパニックに陥り大混乱になる…。

    不思議なホテルを舞台に、“生への執着”と“自己の存在意義”が交差する。
    自分の存在意義が信じられない者は生への執着が薄くなる。
    一人ひとりの人生が浮び上るような展開と台詞が素晴らしく、惹き込まれた。

    トライアラスキー伯爵を演じるキリマンジャロ伊藤さんが大変魅力的。
    謎めいたホテルの中、ドラマチックな台詞が際立って、物語を牽引する。
    白塗りのフェイズランド役の野口広之さんも強烈な印象を残す。
    客入れ時から一貫してフェイズランドのキャラを保ち、伯爵との息も絶妙で見事。
    金と宝石に執着するウェイン夫人役の大里冬子さん、
    声の表情が豊かで、後半の心の変化がくっきりと浮き彫りになった。

    高低差のあるホテルのセットが、不思議な雰囲気を醸し出していて素晴らしい。
    ドアの向こうの光など、照明に工夫がありとてもドラマチックで良かった。

    滝一也さんの本は、いつも“人の心の変化”をとらえて提示してくれる。
    辛く苦しい選択を強いられる人の、受け入れて再び歩き出す強さを見せてくれる。
    メガバックスが描く過酷な設定は、そのための試練なのだと思う。
    創り手の“人生を肯定する”真摯な姿勢にいつも心惹かれる。

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    2014/09/08 04:48

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