ビヨンド 公演情報 劇団ザ?猿ロマン(2000~2010)「ビヨンド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    真実とは
    今回の芝居ほど書きづらかった感想はなかった!(^^;)
    感想を書くにあたって、練りに練って考えた。

    考えて考えて考えた感想!(疲れた!)

    以下はネタバレBOXに。。

    ネタバレBOX

    まず、芝居を観る前にカタログの説明を熟読しないと設定が解りづらいです。


    「地球市第158806号」の365階の住民は「キリツ」と呼ばれる規則に支配され暮らしていたが、その暮らしに特に疑問も持たず、 軽作業をしたり、毎日3度運ばれてくる食事を食べたり、指遊びやお話をしながら過ごしていた。


    ある日、上の階の居たという男が来てから、状況が一変する。

    男はこの暮らしに疑問を抱き、

    「オカシイと思わないか?いったいこの食事やこの作業は誰が何のために運んでくるんだ。俺達は飼われている。飼われて喰われる順番を待っているいるんだ。室長もオカシイと気づいてるだろう?気づかないフリをしてるだけなんだ。」と言う。

    確かに彼らは閉じ込められた世界に居て、外の世界を知らないし、外に出た事もない。
    本当の世界を知らないのだ。


    そのうち、この部屋の住民が一人ずつ居なくなっていく。
    豚の被り物を被った監視人が連れていくのだ。

    この時点で現実世界の人間に飼われる豚の設定を反対にした妄想劇かと思ったが、どうやら、違うらしい。。


    室長は真実を自分の目で確かめようとここから脱出する事を決め、部屋の住人・熊野も室長について自分も脱出すると告白する。

    しかし同じくこの部屋の住人・鳥海はその計画に反対する。

    「そんなことがあるはずない。オカシイだろ?どう考えても、自分達が飼われてるなんてありえない。あるはずがない。今までどおりにキリツを守っておとなしくしていれば、食事も貰えるし、懲罰もされない。」と訴える。

    鳥海はうすうす気づいているものの、真実を知るのが恐くて現実から目を背けてしまう。



    「自分で解ろうとしないものは何も感じないんだ。」と、室長。


    二人が脱出しようとした矢先、鳥海は孤独への恐怖と懲罰への怖れから、動揺し、熊野を殺害してしまう。


    今回の芝居はニンゲンの本質を表現したテーマです。

    同室での裏切り、怯え、現実逃避、いじめ、見えないキリツ・・・ニンゲンの深層心理に迫った鬱の部分を題材にして抉った作品。



    上演後、いったいどれだけの観客がこの舞台を理解出来たのだろうか?
    制作側は一ヶ月以上も前から練りに練って作り上げていくから、事細かに解っていても、ワタクシ達観客は、たった2時間で芝居を理解しなくてはならない。

    表現とは、観客に理解して貰おうと努力する。というのも非常に大切な要素だと思う。
    せっかく大事に作り上げてきたものが理解されないのは悔しいはずだ。



    実はワタクシ達が生きてるこの世界も真実は隠されてて、本当の世界の真実は別のところにあるんだ。と思わせるような芝居です。

    役者陣は目の動き、しぐさ、脱力感、全てにおいて迫真の演技でした。
    素晴らしいです。


    ただ、ひじょうに重いテーマではっきり言ってワタクシは苦手です。
    舞台とは楽しい、感動する。が大前提なのです。



    しかしながら、何日か経って考えると、実はこの舞台、ニンゲンの本質を表現するという事においては非常にクオリティの高い舞台だったのではないか?
    と感じます。
    人は見えない何かで枠を作り、自分自身を縛り、それに目を逸らして生きているのだ。世界のキリツに縛られながら。


    そうして窮地に追い込まれたら、あれ程までに残酷で嫌らしいニンゲンになりさがるんだ、と思い知らされた舞台です。


    作者の言いたかった事は「気づき」でしょうか?



    初心者向きではないです。なので「お勧め!」にしませんでした。



    2

    2008/08/05 12:12

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  • おーじ>
    でしょ?でしょ?

    確かに有意義な、ってか、改めて考えさせられた作品でした。
    で、今の時点で思うのだけれど、あの時、、、観劇した公演直後よりも、更に今の方がより良く理解できる。
    この心境はなんなのでしょうね。
    ヨクヨク考えると、365階の住人6人の性格がまるで違う。
    自信がなくて常に責任転嫁をするヒト。
    他人の考えに常に同調し主張出来ない純日本人的ヒト。
    普段は大人しいがいざという時に強くなるヒト。
    一見強そうだが強いものに巻かれろ的要素の強いヒト。
    とにかく、この365階の部屋はちっさな社会だった。
    だからこそ、キリツがなかったら、秩序が保てない。

    そこで渦巻くヒト対ヒト。
    見えない何かに支配され、自分でない自分。

    この舞台の前半、いや、殆どが暗く陰惨な状況を淡々と進ませているけれど・・・やはり、この舞台は素晴らしく質が高い。
    今、本当にそう思う。

    だとしたら、この本のメッセージの配信に問題があるよね?
    解りやすさ。
    そう、解りやすさだよね?

    観た人の半分以上に解って貰わないとダメでしょう?
    やはり、芝居は作る側の評価ではなく、観客の評価なのだから・・。


    それにしても・・・時間が経過するほど、少しずつ白いキャンパスに色づけされていきます。
    そういう舞台でした。

    次回、東京に来られるなら是非是非、再見したい劇団です。


    2008/08/05 20:54

    確かに難しそうなお話ですけど、発想、着眼点は面白そうです。

    少なくとも、大人しく飼い慣らされ、物言わぬ民として疑問を差し挟まず過ごしてきた自分達にとって、たまにはこういう視点からの作品は有意義なものと思います。

    ですが、そういった自分達のメッセージを、わかりやすく伝えるということも、これもまた大切な要素ですね。

    折角精魂込めて創り上げた自分達の思いですから、わかる人しかわからないというのも寂しいですし、何とも勿体ない感じもします。


    そう言えば、自分が観劇後レビューで振り返る際も、やはりわかり易さ、というのが無意識のうちに、一番重要視しているポイントかも知れません。


    2008/08/05 20:21

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