梵天ヤモリ 公演情報 ひげ太夫「梵天ヤモリ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    唯一無二の「組み体操芝居」
    星の数ほどある劇団の中で「唯一無二」と思う劇団はいくつかある。
    しかし、ひげ太夫は、本当に唯一無二の劇団だ。
    だって、男性役は全員がひげを描いているし、人が縦に4段重なる組み体操を芝居の中に入れてるし、セットも気持ちも人が演じてたりする劇団なんて、ほかにないのだから。

    ネタバレBOX

    ウクレレで歌う前説から、いつものようにスタート。
    そして、いつもの、ひげ太夫。
    面白い。
    いつものように、全員でポースを取りスタートし、全員がポースを決めて終わる。
    フライヤーも好きだ。
    ひげ太夫のフライヤーは、手に取るといつも笑ってしまう。

    女性のみの出演者で、彼女たちが2役演じるときには、男性の場合には必ず「ヒゲ」を描く。女性を演じるときには、それを消して出てくる。
    それがひげ太夫。フライヤーの通り。

    ストーリーは、イマジネーションが膨らむ、アジアが舞台のファンタジーな冒険譚。
    その表現方法は、マンガ的とも言える。

    今回の舞台は、エメラルド島。
    そこで、梵天派、白鳥派という武術の2大勢力の対決を中心に、エメラルド島を我がモノにしようと企む、島と橋で結ばれた大陸にある、南王国の王の話。
    人を感動させ、そのときに心の中に吹く風を操る武術の梵天派、対する白鳥派は拳と刀で戦う。
    木彫梵三という男を軸に物語は進む。

    ストーリーは、とにかくいろんな登場人物がどんどん加わりながら、あれよあれよと展開していく。いろいろ盛り込み過ぎだが、破綻はない。

    2者の対決に第三軸を加え、登場人物を増やすことで、物語がやや膨らみすぎ、いくつかの大切な登場人物の背景を描き切れなかった感はあるが、観客をストーリーに惹き付ける力はあったと思う。

    ストーリーも面白いのだが何よりこの劇団のウリは、「組み体操」。
    毎回、凝った組み体操を見せてくれる。
    人が上に4段重なるなんていうものまで、いとも簡単にやって見せるのだが、台詞のやり取りをしながら、スムーズに組んでいく様は、本当に凄いと思う。

    今回も、人が「気持ち」「風」「涙」「馬車」や「きらめく橋」「エスカレーター」などを具体的な形にして、次々に見せていく。
    「キラキラ」とか、キメのときの「ドーン」というマンガでお目にかかるような、擬音や装飾までも人が具体的に演じて見せる(ドーンは多すぎだけど)。
    「画像のアップ」とか「ちびまるこちゃん」とか、そういうアイデアは面白い。

    主人公の木彫梵三を演じるのは、作・演もしている吉村やよひさんだ。
    彼女は今回も出ずっぱりで大熱演。
    お約束の、自分が演じる役との共演シーンも、わかっているけど面白い。

    そして、こでまり姫を演じた林直子さんが、抜群に面白かった。
    キャラを立てすぎ、かつベタすぎる少し手前で留まったところがいい。

    かなり三枚目の印象が強い姫は、主人公に対して一方的に思いを寄せていて、主人公は嫌がっていたりする。それで笑いを取る。
    そういう設定はよくある。その場合、普通、主人公は別の(美人の)女性と結ばれて、三枚目は(やっぱり)振られてしまうのだが、この作品では違った。
    主人公が女性に振られて、最後に三枚目っぽい姫のほうとハッピーエンドになるのだ。
    これは意外だった。女性の書いた戯曲ならではなのかもれない。
    普通にありがちな展開よりも、このハッピーエンドのほうが絶対にいい。後味もいいし。

    後味ということで言えば、「悪者」キャラが何人か出てくるのだが、完全な悪党はおらず、収まりのいい大団円になる。
    そういうところもいいのだ。
    にこにこして見ていられる。

    この作品には桟敷童子のもりちえさんが客演していた。
    失礼ながら、どれぐらい動けるのか、と思っていたら、組み体操はもちろん、側転までも見せてくれた。
    ドスの効いた王の役はぴったり。ひげ太夫にはいないキャラクターなので、いい人を選んだと思う。
    ほかの役者さんもみんなよかった。
    登場人物として、台詞を言って演じながらも、「橋」とか「キラキラ」とかモノや雰囲気を一瞬で演じ分けなくてはならないし、組み体操は一歩間違えは大怪我をしてしまう。
    それを、全体の流れを壊さず、きちっと演じるというのは素晴らしいと思う。

    舞台の最後は、いつもの通りの「NG集」。
    舞台なので、「NG集」というのも変なのだが、劇中での組み体操などの失敗シーンを、まるで撮影していたかのように、再現して見せてくれる。ジャッキーチェンの映画を思い浮かべれば間違いない。

    毎回、冒頭で、人がモノや気持ちを、どう演じるのかを、丁寧に説明するのだが、それは見ていくうちにわかるので、なくてもいいのでは。
    「これは何々だ」と台詞で言ったりもしているのだから。

    それと、ひと言だけ付け加えるとすれば、少々「長い」か。
    回想シーンが多すぎるかもしれない。

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    2014/07/10 07:09

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