常識破りのミュージカル(いろんな意味で)
1913年、宝塚歌劇団の前身・「宝塚唱歌隊」が創立した。日本に「レビュー」の新風が吹いた年だった。
一般女性たちは宝塚歌劇団の「男役スター」を、「白馬に乗った王子様」かのごとく神格化し、長いあいだ銀座を熱狂させてきた。昭和前期、「レビューを観に行く」は上流婦人のステータスだったのである。
現役 男役メンバーは こう語っている。
「ファンの方のイメージを崩さないため、外出するときは胸元が開いた服装は控えています」
あまり知られていないが、漫画『サザエさん』(長谷川町子)にも、「歌劇団」は登場している。ステージ上の華やかな女性に「恋した」カツオが 劇場楽屋を訪問。ところが その女性が ソバを啜っていたものだから少年の淡い恋心が「冷めた」というオチだ。
メンバーの話を聴けばわかるとおり、宝塚歌劇団は そもそも寮生活であり、「プライベート」はないに等しい。漫画『サザエさん』の描いた「だらしなさ」とは無縁の日々である。
このプロ意識が「あきらめないで!」の裏だ。
『歌劇団ALIVE』は「『宝塚歌劇団』よりも、『劇団四季』よりも、いいなと思ってもらえるミュージカル劇団になりたい」(武田麻美 挨拶)を目標としている。
クラーク博士は「少年よ、大志を抱け」の碑を学生諸氏に遺したが、女性も「志」は高く抱いた方がいい。
『歌劇団ALIVE』は座間市を中心に活動する青少年ダンス・グループ『チェリーKids』が母体だ。出演メンバー5人中4人が「女性」であったのも このためだろう。さながら「女性歌劇団」である。
「常識破りのミュージカル」。ネット情報によれば「15時57分開演ー20時10分 終演」だという。休憩20分間を差し引いても「4時間のステージ」となる。しかも、たった一度きりの。
美術セットは 学芸会である。『歌劇団ALIVE』スタッフがガムテープや文房具で共同作業したのだろう光景が目に浮かぶ。
しかし、そんな美術セットを超越したのが また「志」だった。
BARカクテルの「絵」を、瓶ごとに「拭く」仕草をみせるマスター役・藤島智勝は健気である。