WILCO 公演情報 ミナモザ「WILCO」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    戦争へ行く気持ち
    日本人でも望めば戦争に行ける。自発的に戦争に行く人の気持ちってどんなだろうと思っていましたが、不思議と理解できるなとびっくりしました。丁寧に描かれた物語は、いまの日本を描いているなと思い、揺さぶられました。

    ネタバレBOX

    役者さんも上手い人ばかりで、外国のシーンが多いのに自然に見えました。開演を知らせるブザーが鳴って、暗転するとすぐに銃声があちこちから聞こえる。観客から見るとなんだか現実の戦争とは乖離して、ゲームのように見える。実際に劇中で行われていたのはサバイバルゲームのシーンである事がわかる。そして、再び銃声。こんどは本当の戦争だ。イラクの戦地へと物語は進められていく。でも、冒頭の流れだけ観ても、戦争がフィクションであるという感覚が自分の中にある事に気付く。そして、同時に物語が進むにつれて、誰しもの心に戦争に向かう閉塞感があるのかもしれないと気付く。

    主人公のサトルが家族との確執から戦争に向かうように、またイラクでサトルが出会う医療ボランティアのカガミが、「日本では息苦しくて、自分と思いの違う人は死んでしまえと思っていたら、いつの間にか私以外のみんな死んでしまってもよいと思ってしまった」と言うように、私達の隣にも確かに閉塞感が存在する。その閉塞感は、少し方向が間違えば犯罪に向かわないだろうか。もしくは、外国のように、貧困のため、生活のために軍隊に入るという事が起こらないだろうか。物語はじれったいくらい執拗にサトルの葛藤を描き続ける。そして、父親のようにならないために、戦争でゴミのように死にたいという。戦争はなくならない。目の前の人を助けるなんて自己満足なだけだ。と、周囲を突き放してみせる姿を見ているとイライラさせられるが、でも彼を止める言葉が無い事に気付く。これも、今のネット上の言葉に対して、平和の大切さを訴える事への空虚さに結びつくように見えた。

    終盤、本当はサトルが戦争で誰一人殺していない事が明かされる。殺そうと握った銃の引き金がどうしてもひけなかったと。クライマックスでカガミの言う「武器を持ちたい、戦争がしたいと思うのが本能で、それを止めるのが理性だと思っていた。でも、理性で止められずに起こした戦争をどうすべきか決断するのも本能だ。」カガミの、自分の目の前の人を助けたいと思う、そのために相手に一歩踏み込む勇気がどれだけスゴイことか。

    誰しもの心に戦争に向かう本能も、平和が良いと思う理性もあって、それをどうバランスを取っていくかという思いはすごくしっくりきて重い言葉だなと思います。今の世の中の息苦しさに自分なりに何か出来る事はないかなと考えさせられます。

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    2014/06/30 17:16

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