満足度★★★★★
魂の彷徨か
心の奥底にある”何か“に対して警鐘が鳴り響いた2時間だった。日本において「何故、戦争に行くのか」と言うセリフは、あまり現実味がない。説明にある「戦争に対する考え方」より「あなたは、何をしたいの」と言うセリフが印象的である。自分の心さえも持て余してしまう…そこにソッと入ってくる弱い、そして醜いもの。
さて、本公演は座・高円寺1とい広い舞台に常時いるのは、2人または3人だけ。照明は薄暗く、対象者だけを照らし出し、観客の視線を集中させる。そして濃密な会話が展開する。舞台セットは2階建て(一部3階建て)にし、1階中央に出入り口がある。上手・下手にある階段を昇降することで場面転換を行う。その方法が功を奏し観客の集中力を削がない程度の暗転回数と時間になっていたのは演出の妙だろう。
冒頭にも記したが、現代日本において、”戦争”は切迫感があまりないと思う。確かに世界のどこかでは紛争をしており、傭兵という言葉も新聞・雑誌で見たりもする。”対岸の火事”的な考えではいけないとも思う。
公演では、主人公(海外を転戦)と父親(日本在)の往復書簡のような展開である。そして父親への反抗、確執そして憎悪を吐露する… 自分は、主人公のインナートリップとして受け止め、魂が騒いだ。疑問は、戦場に向かわせる動機付けが必要だとしても、父親に対するマイナスの感情だけでは弱いと思うところ。
とても満足した公演です。今後も楽しみにしております。