時をかける稽古場 公演情報 Aga-risk Entertainment「時をかける稽古場」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    アイデアを更に広げる作劇力
    入口は、かっこよくいえばバックステージものなのですが、そこからの展開が抜群に面白い。

    設定のアイデアに加えて、それがへたれることなく、新たな展開へと組み上げられ、観ていてぐいぐいと引きこまれる。

    ほんと、面白かったです。

    ネタバレBOX

    正直なところ、舞台で演じられるタイムスリップものって
    これまであまりよい印象がなくて、
    いろんな説明に舞台が勢いを失ったり、
    明らかな矛盾や違和感に興ざめをしたり・・・。

    その点、この舞台は本当によくできていました。
    パラレルに動いている世界の人間をそのまま入れ替えるというやり方は、
    これまでもあったのかもしれませんが、
    少なくとも私にとってはコロンブスの卵的な発想で
    しかも、そのことがホワイトボードで1分で説明できてしまうのはちょっとすごい。
    その設定の工夫で、よしんば文系の人間であっても、事象に対するロジックなどに対する戸惑いなどもとてもうまく回避されていて、余分なことに過度に気を取られない分まっすぐに展開に生まれる面白さに満たされて。

    それはね、あんなもので時間+人が入れ替わるというのもチープといえばチープなのですが、それがびっくりするほどチープだからこそ、すっと設定を受け入れられてしまう部分もあって。
    そういうお手軽さでいえば衣装での演じるロールの区別の仕方なども
    すごくシンプルでうまいなぁと思う。
    公演2週間前の稽古着、本番当日の公演Tシャツ、さらにその先の大人の姿と、それぞれの衣装にちゃんと理があって、しかもそれらが役者が場ごとに背負うステイタスをとても端的に表現している。

    また、そのアイデアからさらに広がりを作る台本にも感心。
    ひとつの発明(?)自体でドヤ顔になることなく、
    そこを足場に、二つの時間のはざまに様々なものがしなやかに紡ぎいれられていく。
    事象として、2週間の間に彼女に振られていたとか、降板騒ぎになっていたとか、絶妙な力加減でじわじわとしっかり伏線を張っておいて挙句のはてにはインフルエンザ発生とか多彩な出来事の設定で観る側をしっかりと揺さぶり、
    一方で2週間の稽古期間で、役者たちがどれだけのものを身につけ、それでもさらに上を目指そうとしているのかといった、日頃、観客には見えない演劇を為すことへの感触や矜持のようなものも織りこんで。

    役者も、本当によくキャラクターを作りこんでいました。
    けっこう人数をかけた芝居なのですが、それぞれの個性がしっかりと舞台にあり時間を跨いだ色を作り続けていて、だから、時間が前後仕様が異なる世界の人物が混じりあおうが世界がぶれない。

    終盤、パラレルワールドがさらに一本増えて、物語がさらに膨らみつつ、見事に回収されていくことに目を瞠る。
    観終わって、描かれたパラレルワールドたちが束ねられ、一つの世界観が観る側に残り、冒頭の世界での時間がとてもビビッドに感じられて。
    名作「ナイゲン」の時もそうでしたが、シチュエーションがしっかりと歩み、描かれた顛末が、コメディのテイストでちゃんと充足感となり、観る側を満たしてくれる。その作劇力に今回もしっかりと捉われて・・・。
    ほんとうにおもしろかったです。

    あと、余談ですが、この舞台に描かれた劇団「第六十三小隊」、何年か前に惜しまれつつ解散した国道名を冠する某劇団の姿が紡ぎこまれているように思えて。いろんなエピソードが彼らの記憶と重なるにつれ、作品が作り手の彼らへのちょっとしたオマージュのようにも感じられたことでした。

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    2014/06/12 17:25

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