江戸系 諏訪御寮 公演情報 あやめ十八番「江戸系 諏訪御寮」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    騙りのための語り!
    とにかく堀越涼の語りが巧くて惚れる。堀越によるオープニングの怪談を聴いているとき、彼は笑顔なのに鬼の面をかぶっているような得体の知れなさを醸していた。芝居の始まりは、劇団主宰の挨拶という体で、そこから生演奏&歌(歌謡曲)、台詞で、現実と物語の境界が溶けていく。

    舞台美術の陰陽の模様が、浮き上がることもなく衣装、俳優たちと溶け込んでいた。この劇場には、真ん中に大きな柱が一本あるのだが、その柱をうまくつかって陰から顔を出すことにより、不穏な空気を盛り上げていく演出はさりげなくて見事。

    作品の後味の悪さというか、不気味さは最後まで残って、ぞっとさせる。こんなおぞましく美しい語りは堀越だけのものだと思うし、彼を観ていると「語り」が「騙り」として人々を虚構の世界にいざなうものであることを、しみじみと感じる。前作『淡仙女』での、神への生け贄の花嫁と、都会のストリッパーとを重ねる描写はとても魅力的で、堀越の美学(演劇、女性、すべての虚構への)がびしびし伝わってきた。これからも、あのような意外性のある人間像と、聖俗の融解する境目を見せてくれるような団体であってほしい。

    ネタバレBOX

    脳溢血で倒れた祖母をデイホームに連れていった時、美斉津恵友演じる孫だけが「お化粧してくればよかった」という祖母の言葉をすくいあげて聞き取ってあげる細やかな描写に思わず涙した。同様に堀越は、記憶を失った居候の少女、巫女としての能力に目覚めてはいないがポテンシャルは絶大な末娘など、女性のか弱さ、たおやかさを表現する設定、筆力では確かなものを持っている。しかし、そのために女性観、特に結婚観が少し古いのは否めない。

    伝統的な日本の「田舎」が舞台だからしかたないのだが、優しく孫を見守る、謎めいた言動で男を振り回す、だめな亭主をどやす、という女性キャラクターたちの描き方が類型的であるという弱さがある。「幻想」は「物語」と紙一重のところにあるので、用心しなければならない。もちろん、それだけでは済まないのが堀越流で、中心人物である「御寮さま」たる金子侑加が、真の「ラスボス」だった場面はとても非情な描写で、胸が締め付けられた。(そして彼女が着物で軽やかに光GENJIの『ガラスの十代』を踊る姿はとっても可愛らしかった!) 

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    2014/06/09 01:16

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