満足度★★★
差別の構造
様々な団体によって上演されている野田秀樹さんの名作戯曲を、中屋敷法仁さん演出、小野寺修二さん振付、阿部海太郎さん音楽、若い役者達と興味深い組み合わせでの上演で、シンプルながらイメージ豊かな表現が美しかったです。
共同体が異物を排除する差別の構造や、生きることについて、野田さんならではの物語と強い関連を持たせた言葉遊びが散りばめられた台詞のやりとりで寓話的に描いた物語で、重いテーマを扱った絶望的な内容ながらも清々しい軽やかさを感じました。狼ーおお、神ーOh,Godー大事(おおごと)と言葉が連なって行くのが印象に残りました。
台詞回しは基本的にストレートで、アンサンブルの3人を含めた身体表現が多用されていて、メインの登場人物以外も暗転を用いずに声のトーンや姿勢で瞬時に演じ分けるシームレスな転換が小気味良く、観客の集中力を削がない演出でした。
視覚的に変化が少ない分、音楽や効果音が多く用いて場面を分かり易く表現していましたが、もう少し役者の声だけが響く場面があっても良いと思いました。
チラシのビジュアルはスタイリッシュなイメージでしたが、実際の衣装はタイダイ染めを用いた土着的な雰囲気で、中屋敷さんが女体シェイクスピアのシリーズで行っている様な設定の置き換えはなく、戯曲の世界観からあまり距離を取っていなかった様に見えたのが少々物足りなく感じました。
4人のメインキャストはそれぞれ個性的で魅力的でした。特に、台詞でも「大きい」と言われている赤鬼を敢えて小柄な小野寺さんが演じていたことによって、フレンドリーな雰囲気が出ていてたのが良かったです。