劇団かさぶた終始公演『凡』 公演情報 劇団かさぶた「劇団かさぶた終始公演『凡』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 戯曲、地域、男と女のパラドックス
    戯曲風味のシュール・レアリズムが突出しており、時に役者が、時に観客が困惑してしまう。


    普段、いわゆる〈劇〉を観て、その役者が読み込む脚本の存在を気にする余地はない。シェイクスピア劇においては、難解な叙情詩のニュアンスなり、また伝統の文法式を意識することはある。これは、「英語圏の父」がシェイクスピアなのだから、その脚本(日本語訳だが)を役者、観客が「追う」のは当然の結末だろう。


    ただ、『劇団かさぶた』はシュールレアリズムというべき都会の空気感が漂っている。NANASHI(力み気味)が前説にセーラ服姿で登場するなど、その姿勢は「反社会」である。
    この形式が「戯曲」を正統に記し、演じ、それを異質にすることが既に異質なのだ。

    ネタバレBOX

    「幽霊」という日本ファンタジーをオチに引用した点は西野マコトの「失敗」だろう。「狂気」をもつ田舎人が 「公園の違法建造物」において錯綜する そのパラドックスはミステリーであるが、「幽霊」が台詞を放つことにより彼らは もはや「狂気」ではなくなってしまう。
    西野マコトは この相殺を どう考える。



    清彦「読んでもいいですか」

    足立「ああ、いいよ」


    そう、毎日新聞を読み始めた清彦(半野 雅)はグチャグチャに折ったあげく、奇声とともに投げた。

    清彦「すいません」

    足立「時々、新聞には そういう役割もあるからね」


    清彦「なんか、“お前ごときに読めるのか?”って言ってくるようで!」


    たしかに、金髪、短パン、ビーチサンダルの若者が新聞紙を開いた姿は、相当「異質」である。「新聞離れ」が叫ばれる中、清彦の教養を伝えるシーンだと思った。「きっと、何がしかの理由があるはずだ」と。

    それが、怒り狂う「キレる若者」に変質した衝撃シーンは、「狂気」であり、笹本、足立が「共存」してしまっていることが、「地域の狂気」を象徴する。呼び方を変えれば「場の狂い」である。

    それを説明するのが、役所に勤める地方公務員・森田、雅美の「狂気」というポジションだろう。「唯一の客観」は棺桶を叩く正人だった という逆説には ニヒリズムも感じる。


    男A、男B、男Cの深層、雅美の人物描写は欠けており、中途半端な脚本ではあった。
    しかしながら、
    春子「目立たない女なんです」雅美「そう、あなたは目立たないということを自分で解ってるのね!」(妖艶)
    といった、相手の台詞をレスポンスする、似た台詞を往復する「居酒屋会話」の退屈性と、世の中をえぐる 洞察、「狂気」。これは評価したい。

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    2014/05/15 23:49

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