パイロキネシス 公演情報 モリンチュ「パイロキネシス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    笑顔だけは、ホンモノだ

    女子レスラーの宿命は大相撲でいうところの同部屋対決である。

    新人レスラーなら、場外バトルから観客を守る誘導員になるし、ゴングの汚れを取る清掃員にもなる。
    つまり、ロープを行き来し怪我を負った後、さらなる仕事が待っているのだ。この「残業」を思えば判定待ちまで体力を消耗する選択はない。



    ジャガー横田選手が「アイドル・レスラー」だった過去を覚えているファンも少数だろう。どんなに身体に怪我を負っても、女性であることを忘れ、観客が応援する限りラリーアタックする姿は羨望の眼差しである。
    もちろん、それは、半身不随に陥るリスクと向き合う職業だ。新宿FACEで女子プロレスを観戦すると、前列には車椅子の元女子レスラーがぼーっと虚脱感を放出していた。会話すらままならない身体状況であった。


    『パイロキネシス』は、「プロレス妄想癖」が特技のアイドルみるく・るみ(野崎万葉)の物語だ。
    芸能界やインターネットの「当たり前」を暴く脚本と攻撃的な転換には かなり惹かれた。

    ネタバレBOX


    「アンチ商業演劇」を小劇場で実行する その意味は どこにあったのだろうか。
    小塚建(舩木 勇佑)を主演に、草間(矢守忠彦)演出のもと開催された商業ストリート 舞台(劇中劇)は、どうも赤坂ACTシアターを暗示していた。松山ケンイチや堀北真希などのテレビドラマに活動の本拠地を置く俳優が、「舞台初挑戦!」なるキャッチフレーズで主演へ就任してしまうパターンがある。
    このビジネスを「話題性」と呼ぶ。

    本作『パイロキネシス』は、イケメン・アイドル俳優である小塚建や アイドルみるく・るみ を出演させ、第一段階において「話題性」を皮肉る。これこそ痛烈な商業演劇批判である。


    ところが、第二段階においては小塚を「勉強させて下さい!」と演出家へ土下座させることにより、小劇場が「下克上」を達成するオチなのだ。あのシーンは「白昼夢」の処理方法であったが、本質的に そうした「救い」だと思う。



    「炎上ビジネス」についても考察させられた。
    「インターネットの脅威」は劇作家・鴻上氏らが「俺は世間から 求められている」とアピールしているが、矢守氏は その100m先をゆく最先端だった。
    「炎上ビジネス」を芸能界と出版社の「持ちつ持たれつ」から指摘する見方は斬新である。
    現状は「ネットユーザー」が主導者だとされる。にもかかわらず、仮に黒幕が操った「話題性」だとすれば、彼らは消費者のごとく小さな、単なる「受容者」に過ぎないということになってしまうではないか!
    踊らされているのは君たちの方である。

    『パイロキネシス』はフィクションではある。しかし、ゴーストライター騒動級の現実を告発している。

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    2014/04/20 01:46

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  • こんなにも熱いコメントを本当にありがとうございました!

    これ程汲んでくださる方がいることをとても光栄に。何より、意義を持って始めた人間として、とても幸せに感じます。

    これからも、思うことを伝え書いていきたいと存じます。ありがとうございました。

    2014/04/20 03:44

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