満足度★★★★
白ネコとはんぺん のような境界線
私は 酔っ払いサラリーマンに対しても、「丁寧」に対応する。
相手がへべろけに解らないことを質問すればすぐ教えるし、世間話を求めてくれば、熟睡するまで繰り広げてしまう。
ピンク色の肌をした男性は 私に こう語った。
「あんた…本当に親切な方だね、親切な方だねえ。こんな どうしようもない酔っ払いをさ…」
酔っ払い に限らず、人は老人だとか、ホームレスだとか、そういった弱者と接する時、明確に、その存在を区別しているのではないか。つまり、友達グループのような「輪」にいる、共感者としての自分自身はいない。
私は それができず、場合によっては子供にも敬語を使う。
『アマヤドリ』は 世の中の「悪人」に接する、「わたしたち側」の皮肉性だった。
民間刑務所収容者を更生させる職業人=限定社員が、境界を明確に区別する「わたしたち側」だとしたら、この構図は相当、挑発的である。
なぜなら、受刑者が陥っている「愛と憎悪」のジレンマを、矯正しなければならい職業人も抱え、それがコーラのバニラアイスのように境界線を曖昧かつ、接合させているからである。
実際の民間刑務所ではまずないことだろう。受刑者と職業人の間に張られたロープが緩む姿を かなり明示的に演技するキャスト陣だった。