まほろば 公演情報 新国立劇場「まほろば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    まほろばという場と、やりとりへの切実さ
    『鳥瞰図』『混じりあうこと、消えること』ときたシリーズ同時代も、とうとうこれで終わり。とっても寂しい。ものすごく充実したプログラムだった。

    『まほろば』は、切実で、それでも、その切実さがどうしようもない笑いを誘う、女性たちの物語。僕ら男性が、なんだか、絶対に、立ち入ることができないような、そういう場が、世代を越えた女性たちの会話劇の中に、作られる。

    観て、良かった。僕は、この劇の話を、誰かにしたくてしょうがないのです。

    ネタバレBOX

    たとえば、なにかを「コレクション」するのは、圧倒的に男性だそうである。山田五郎氏は、「男は子ども産めないからじゃないですかね」と言っていた。どこかで、僕ら男は、子どもを産むということに、何かで補完しようとするほどに、憧れを抱いているのかも。というわけで、男性が書いた、女性の妊娠/出産についての会話劇である。

    全く無駄のない会話の応酬に、2時間弱があっという間。緻密な人間観察が生み出す、それぞれが人生に必死だからこそ生じる笑いに、とてもたくさん笑った。すごく、よくできた台本だと思った。また、会話の場で、しゃべっていない人物の表情やしぐさがとても細かくて、おかしくて、何重もの無言の言葉がしこまれているようだったけれど、これらは台本にないので、演出と、役者さんたちの力だろう。

    世代や立場を越えて、女性達が、妊娠や出産に対する思いをぶつけ合う。人生がかかっていて、みな必死。やがて浮かび上がるのは、お互い、やりとりを欲しながら、どうしたらいいのかわからないもどかしさだ。どうやって相談したらいいのか、どういうアドバイスをしたらいいのか、わからない。立場の違いを意識してしまう。

    これらを、端から見ているおばあちゃんと、11歳の女の子が、とりもつのである。彼女たちは、立場に頓着しない。それでいて、空気を読んでいないわけではなくて、実は、自分の立場しかわかっていない大人たちよりも、よほど冷静に、場をみつめているのである。

    人同士のやりとりが希薄になっている世の中。それぞれの立場が多様化して、複雑になって、話しても、通じない、とあきらめてしまう。バラバラになってしまうようだけれど、「祭り」という「場」が、おばあちゃん(後期高齢者だ)や子どもという、立場を越えた人が、つなぎ止める、そんな可能性が、ここには示されていると思う。

    可能性、というより、願望、かもしれない。まほろば、という理想郷の物語であってみれば。でも、人同士のやりとりに対する、切実な思いは、絶対にあって、そのために絶対に必要である言葉を、最大限に使って、表現する作家が、演出家が、役者さんたちが、ここにはいて、そこに、ほんの少しでも、希望を、見ようと思うのである。

    妊娠/出産に、どこかで憧れる、男性が書いた劇なので、もっと色々、どろどろした部分なんかも、本当はあるのだろうと思う。でも、そういう部分を含めて、この劇は、やりとりを生み出す場をつくろうとしていると、思った。この劇を通じて、なにかを、やりとりしたくなるのである。

    だから、僕は、この劇の話を、お母さんや恋人と、したいと、思った。

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    2008/07/15 02:31

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  • コメントありがとうございます。いけさん。ボム木偶です。

    本当に、僕ら男は、女の人のことをまったく理解していないと思います。教育として、男女平等みたいな流れだからかも知れないけど、男性と女性の違いは、ほとんど無視されてる気がします。たぶん、意図的に。だから、僕は、この舞台を観るまで、例えば、「閉経」という言葉を知りませんでした。聞いたこともない言葉でした。あ、生理って、そういえば、あったね、へえ、なくなるんだ、なくなるの、まあ、そうだよね、みたいな感じで、「生理」自体、意識的に思い出さないと忘れちゃうくらいなもので。ごめんなさい、と、思いました。

    そんな僕ですので、まさかキョウコが妊娠してるなんて、そんな可能性、夢にも思いませんでした! びっくりです! 「水、がぶ飲み」は、妊娠のサインのひとつと考えられるのですか? 知りませんでした……。僕は、ラストの、おみこしが通るときの、あのなんだかわからない、不気味なものが通り抜けるところで、お腹を押さえたのがミドリとユリアだけだったので、てっきり、妊娠は彼女たちだけだと思ってました。

    でも、いや、キョウコ、妊娠してるかもしれないですよね。確かに。キョウコは、「私もおみこし担ぎたいなー」みたいなことを言っていて、女の人の中でも、男の人に近い人として描かれてたと思います。でも、そんな彼女も、妊娠してるかも……おお、この、確定できない感じは、きっと、女の人が、自分が妊娠したのかわからない時の、微妙な不安感に通じるんでしょうね。この、妊娠、「してるかも」ってとこが、怖いです。ほのめかしが積み重なって、「妊娠」につながるという描かれ方だったので、キョウコの妊娠も、ほのめかされてるかも!

    やっぱり、僕ら男からすると、女の人は、すごいな、と思います。キョウコ妊娠説を聞いて、ますます、そう思いました。

    そして、男性と女性の身体的なちがいについて、もっと、男女とも、考えたほうが、やりとりがスムーズにいくはずなのに、と、思ってしまいました。だから、いけさんも、男性が引いてしまうんじゃないか、と心配されてしまうわけですし、僕も、男性が書いたものだから、女性が観たら突っ込みが入るんじゃないかな、なんて、心配をしてしまいました。でも、そういう、男女の、「異性が観たら」的な心配も、視野に入った舞台だと思います。

    とても面白い考察、ありがとうございました。すごく参考になりました。

    2008/07/16 22:55

    私は女なので男性がこの舞台を観てどう感じるのかすごく興味がありまして。想像以上に本能に縛られているんです女の体って。それが女の強さであり怖さでもあるんですが。この舞台を観て男性がひいてしまわないか心配だったのです。ボムさんは好感をもっていただいたようで安心しました。ところで私は登場人物のキョウコも妊娠してるのではないかと思ったのですが(水のガブ飲みシーンとかあったので)。どう思われますか?

    2008/07/16 18:38

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