満足度★★★
正義と悪について考えさせられる
この劇団の特徴的な要素である詩的な台詞やダンス的な身体表現を用いない、リアリズムの会話劇で、物語と演技の力で見せる作品でした。
警察や戸籍制度に関して独自の法律が定められている行政特区を舞台に、ストーカー殺人を犯した若い男と、老人の大量安楽死殺人を行った中年の女が、民間の派遣社員であるソーシャル・ワーカー達と対話するシーンを中心にして、ソーシャル・ワーカー達のプライベートでのエピソードも絡み展開し、様々な考え方がぶつかる様子がスリリングでした。
特区という設定を用いることによって、単純な善悪二元論ではなく法律と倫理の関係についても考えさせる内容になっていたのが印象的でした。
緊迫した口論や重い沈黙といった深刻なシーンの中にもふとコミカルなやりとりがあったりする、緊張と弛緩のバランス感覚が良かったです。
机と椅子といくつかの家電が置かれただけのシンプルなセットを動かさずに登場人物の立ち位置のみによっていくつかの場所を描き分けていたのは良かったのですが、家電や途中でわざわざ出してくるあるアイテムを用いる必要性は感じられず、もっと切り詰めた表現でも良いと思いました。