満足度★★★
後ろを見ながら歩く
浮遊感のある文体と特徴的な空間による淡く謎めいた不思議な質感が印象に残る作品でした。
人生があまり上手く行っていない男1人と女2人が後ろ向きにゆっくり歩く「バック歩行」で緩やかに関係する物語で、大半の台詞がモノローグで、2人あるいは3人が舞台上にいてもあまり会話がなされず、「〜した」と言った後に「〜してしまった」と言い直す文体が多用され、独特の感触がありました。
バック歩行については何故そうするのかは明言されないものの、人生に起きた大小の出来事を伝える話の文末を言い直すことと組み合わさって、過去を後悔しつつも少しずつ進んで行こうとする人の心境が身体表現として象徴されている様に感じました。
いくつかのエピソードが語られるものの、ドラマとしてのクライマックスが無く淡々と続くのが印象的で、中盤までは独特の雰囲気に引き込まれましたが、この様な形式で100分という上演時間は少々長く感じられました。
ダンサーである作者ならではのコンテンポラリーダンスについてのエピソードが楽しかったです。
幅1.5m程の細長い舞台の両側に客席があり、照明は天井にはほとんど吊されずに舞台両端に組まれたスチールのアーチに設置され、横から照らし出す空間演出が新鮮でした。