満足度★★★★
特攻の起源
どこまでが事実に基づいていることかはわからないが、
少なくとも作品には、
「特攻」を可能にした精神が、どのように醸成されたのかの一端が描かれている。
作品内ではそれを「空気」とも表現している。
多くの兵士が命を賭す攻撃を神聖な行為として受け入れるためには、
人間魚雷「回天」に最初に乗り込んだ2人(黒木・樋口)の行為が、崇高な神話として機能する必要があった。
黒木はそのことに自覚的であった。
それこそが、この戦局を「回天」させ得るものとして。
そして、この2人の物語を、1人の整備士が別の視点から見つめるという話。
集団的自衛権の行使容認が進もうとしている社会状況がある一方で、
特攻隊の物語が美談のエンタメとして受容されている。
そんな現在の世相に漂っている「空気」をこの作品は問うている。
過去を見つめると同時に、現在について考えさせられた。