満足度★★★
禍々しく滑稽な人達
チラシの晴れやかなビジュアルとは正反対の禍々しい雰囲気が濃厚な作品で、気持ち悪さのあまり逆に笑える内容でした。
結婚して妻の出身地である村に移り住んだ男が、その土地ならではの奇妙な風習に巻き込まれていく物語で、伝統に固執する人達の滑稽さがシュールな性的表現を多く盛り込みながら描かれていました。
様々な日用品や家電製品をビニールで包み天井から吊った美術が異界的雰囲気を生み出していて良かったです。対面式になっている客席の後方に横一列に並べられた人形の存在が、物語の中で語られる悲しい存在を象徴している様で不気味でかつ切なかったです。家の出入り口の表現も宗教的なものと性的なものを連想させて興味深かったです。
どの役者も良い意味で気持ち悪いキャラクターを怪演していて楽しかったです。特に男性陣の変人っぷりが強烈で、本人がシリアスになる程に奇妙さが際立つのが可笑しかったです。
演技や台詞が魅力的な場面が多かったのですが、全体に繋がっていく感覚が弱く、面白いディテールを並べている様に見えたのが勿体なく思いました。
近年の断片的な作風に比べると一貫した筋があって分かり易い内容でしたが、その分こじんまりとしていて独特の拡がりが感じられませんでした。