江戸系 諏訪御寮 公演情報 あやめ十八番「江戸系 諏訪御寮」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    大河ドラマの趣がある和風ホラー恋愛譚
     小劇場楽園は大きな柱を挟んでL字型に客席が設営された劇場です。ほぼ正方形のステージ中央には陰陽魚の模様が描かれ、壁は障子で囲まれ、舞台上の出入口の1つにはタイトル文字が書かれたのれんが掛けられています。怪談が似合う和風の空間で、現代服の人々が歌い、舞い、演じます。ステージから柱を挟んで反対側には電子ピアノ、サックス、ヴァイオリン、パーカッション等の演奏者が控える場所があり、一部には演奏と出演を兼ねる人もいました。客席通路も含め劇場内全体を使ったお芝居でした。

     戯曲は力作で、本筋にまつわるサイド・ストーリーも面白いので、休憩込みで3時間の大作にしてもいいのではないかと思いました。2つの家族の話だと、たとえばケラリーノ・サンドロヴィッチ作『百年の秘密』(約3時間25分休憩込み)もあります。生演奏を含むさまざまな演出的趣向については、戯曲が複雑な構成であるせいか、全体的に盛り込み過ぎの印象を受けました。

     客席通路で大きな声を出す場面が少なくなく、私個人としては耳がつらかったです。大劇場でも通用する声量をお持ちの役者さんは、そのあたりの調整もしてもらえたらと思いました。
     印象に残った役者さんは、篠塚家長男・春平役の美斉津恵友さんと、諏訪家長女・琴美役の金子侑加さんでした。

    ネタバレBOX

     幕開けに朗読劇の体裁で、十六島という架空の島を舞台にした“人食い鬼の出てくる昔ばなし”を語ります。そして作・演出・主宰の堀越涼さんが口上で、現在の十六島における「みやげもの屋を営む篠塚家 VS 介護デイサービス業を営む“拝み屋”諏訪家」という本編の構図を解説しました。

     主軸になるのは不思議な少女と篠塚家長男との恋愛で、その少女の正体が実は篠塚家の祖母だったというエピソード。祖母が記憶喪失の状態で少女の体に乗り移ったのは、諏訪家代々の呪いの誤った効力のせいでした。呪いの原因をたどっていくと、“人食い鬼の出てくる昔ばなし”に突き当たります。大河ドラマのような重厚さに感心しました。人食い鬼(正確には子鬼に若い女を食わせる母鬼)は今も存在しており、篠崎家の悲恋のエピソードが一件落着した後も、諏訪家の呪いと生贄の歴史は続いていきます。諏訪家長女は実は本人ではなく、鬼の呪術で延命した赤子・千代だったという結末は、痛快などんでん返しになっていましたが、2時間に収めるには要素が多すぎたと思います。

     篠塚家と諏訪家の人々が同じ場に登場しながら、別の空間(それぞれの家の居間)にいる演技をしたり、中盤あたりにある少女と篠塚家長男が出会う場面を、プロローグ的に冒頭付近でも演じていたり、歌謡シーンで出演者が本編には関係のない話題を観客に話しかけたり、その他にもさまざまに演劇ならではの手法が採用されていました。やる気も工夫も素晴らしいと思いますが、削れるところは削ってシンプルにした方が、物語が分かりやすくなると思います。たとえば諏訪家が今に至るまでのエピソードは難解に感じました。

     「恋の片道切符」「ダイアナ」「すてきな16才」「悲しき16才」「お嫁においで」などのオールディーズや「ガラスの十代」といった80年代ポップスなど、古い目の名曲を生演奏とともに歌い踊ります。明るい音調に悲しい思いを乗せるなど、あえてギャップを持たせることで感情や展開を粒だたせていました。しかしながら、ただでさえ複雑な物語の流れを寸断してしまっており、持ちうる最大限の効果が出ていたとは言い難かったです。まず、2時間のドラマに対して歌謡シーンの数が多すぎたのではないでしょうか。ある場面を演じてからそれに合った歌謡シーンになる場合、観客にとっては同じ意味の場面を重複して観ることになるので、その点でもテンポが落ちていました。いっそのこと演じる場面はカットして、歌謡シーンだけで表現してもいいのではないかと思いました。

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    2014/03/14 16:26

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