希求の果て 公演情報 男〆天魚「希求の果て」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    プレゼントをいただきました。
    き‐きゅう【希求/冀求】 [名](スル)強く願い求めること。「平和を―する精神」

    もしも、願いが一つだけ叶うなら、
    選ぶのは自分以外の、自分の大切な人の願いを叶えることかもしれません。

    多分、作品の根幹の思いはそんな感じな気がします。
    誰かが、誰かのために願ってる、その繰り返し、巡り合わせ。


    ネタバレBOX

    羽を奪われた3人のおっさん天使が課題を与える。
    課題を達成しなければ、元に戻れない。
    (なんでそうなったかは忘れてしまったわけです。作中で出てたかな……)
    「困った人を助けなさい」
    その課題を達成するために街に出る。

    まずは困った人を探さなければならない。
    困った人なんて、いくらでもいる。不幸じゃない人間なんていない。
    でも、『不幸』の判断が難しい。
    死や病気、あからさまな『不幸』はわかりやすい。
    でも、その人にとっての『不幸』はわかりにくい。
    課題を達成するには『幸福』にしなければいけないので、『不幸』は選ばなければならない。
    そんな言いあいをしながら、困った人を探すために街に出る。

    3人のおっさんは各々、困った人をみつけて、自分のターゲットにします。

    ・好きな人に好きになってもらえなかった女。
    ・身体に病気を抱えた男。
    ・ひきこもりで若年性痴ほう症の、恋人のいない男。

    女は病気の男の妹でした。何年も会えてませんでしたが、病気のことを知った兄貴分が探してきてくれたのです。

    女の好きな人は、ひきこもりの男の友人でした。その友人は男の為に、彼女と会わせました。彼に恋人を作る為に。
    女は男と恋人にはなりませんが、友人になりました。

    病気の男の兄貴分は、男に手術を受けさせるために事務所のお金を盗みました。その為にその身が危うくなりました。

    各々に自分の願いと、自分の大切な相手の為の願いを抱えます。

    ・自分の病気を治したい。死にたくない。
    ・自分の友人の病気を治したい。
    ・自分の兄の病気を治したい。命を助けたい。

    ・自分の恋を叶えたい。好きな人に好きになってもらいたい。
    ・自分の好きな人の恋を叶えたい。好きな人に好きになってもらって幸せになって欲しい。

    ・自分の命を助けてくれた相手の命を助けたい。

    叶えてもらえる願いは一つだけ。
    天使が鐘を鳴らせば、願いが叶う。
    でも、願いを叶えた代償として、誰かの願いを叶えたら、その誰かは自分を忘れてしまう。

    それでもいい。

    そう言って、自分の大切な人の願いを叶えます。

    自分の大切な人が、自分の知らないうちに自分の願いを叶えてくれるのです。
    でも、その人を忘れてしまう。その大切な人を忘れてしまうのです。

    願いを叶えたんだ。だから、幸福になるはずなんだ。
    おっさん天使達は叫びます。
    幸福になってなければ、課題を達成することにならず、元に戻れない。
    なのに、自分が願いをかなえた人達は不幸になってるように見える。

    ・女は好きな人が好きになってもらえた。兄の病気も治せた。
     だけど、自分の願いを叶えてくれた友人のことは忘れてしまい、自分の兄には忘れられてしまう。
    ・病気の男は病気が治った。自分の兄貴分を助けることが出来た。
    でも、自分の願いをかなえてくれた妹のことを忘れてしまい、兄貴分には忘れられてしまう。自分を助けてくれようとしていた人が自分に敵意を向けてくる。
    ・ひきこもりの男は好きな人の恋を叶えることが出来た。
    でも、その人に忘れられてしまう。自分は忘れてしまうのが得意なんだから平気なんだと思ってた。でも、彼女が好きだ、忘れたくないんだ、その気持ちが残ってしまう。
    彼女は自分を忘れている。自分も彼女を忘れている。でも、自分は彼女が好きなんだと思う。

    自分の願いを、自分以外の誰かが叶えてくれたはずなのに、幸福にはなれていない。
    幸福には見えない。
    元に戻した方がいいんじゃないのか。でも、天使には元に戻す力はない。
    そこに神様が現われる。
    ずっと天使と人間の周りにいて、天使を見ていた神様が。

    天使は神様に元に戻してほしいとお願いします。
    神様は天使に
    願いを叶えても人間は幸福にはならなかっただろう?それがわかればいい。
    そう言います。
    自分は人間の願いを叶えたことはないと、
    ある人の願いを叶えると、別の人は不幸になる。
    それどころか、自分さえも更に不幸になることもある。

    代償を受けるのなら、元に戻してあげよう。神様は天使に言います。
    天使は代償を受けても、元に戻すことを選びます。

    神様の力で、忘れていた人間達は思い出します。
    自分を大切に思ってくれていた、自分の大切な人のことを。


    不幸はなくならない。
    でも、だから、不幸でも幸福になれる。


    神様は願いを叶えてはくれない。
    でも、神様は雨を降らせてくれる。雨は神様のプレゼントなんだ。
    雨が降らなければ、人間は生きていけない。神様のプレゼントで人間は生きていくことが出来る。


    そんな話、でした。
    相変わらず、伝えきれません。
    でもでも、伝えたいなって思う舞台でした。ほんの少しの欠片でも、伝わればいいなと思います。


    どれだけ強く強く心を揺さぶられても、
    それでも全てを覚えてはいられない。忘れてしまう。
    でも、だから、何度も劇場に行くんだと思います。
    素敵なものをどれだけ受け取っても、どうしても零れ落ちて行ってしまう。
    でも、だから、素敵なものを補充するために劇場に行くんだと思います。
    劇場は素敵な人達が、素敵なものを作ってる、素敵な場所です。本当に素敵。

    本気で私の感想文などでは何も伝わらないと思うので、機会があれば劇場に行ってみてください。
    素敵な作品に関わった人達の関わるものはきっと素敵です。
    この感想文を書いた舞台は終わってしまいましたが(あ、今回のはDVDも出ますよ!!)
    関わった人達のこれから関わる作品もきっと素敵だと思います。
    そうやって、出会って行くのが好きなのです。そうやって出会いをくれる人が好きです。



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    2014/03/14 15:48

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