蜜月の獣 公演情報 小西耕一 ひとり芝居「蜜月の獣」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    切ない狂気
    ひとり芝居というのはユニット名だそうで、第四回公演となる今回は三人芝居。
    軽そうなキャラと会話のリズムにいつもより笑って観ていたら
    中盤から一気に小西モード全開、重くてじっとり行きつく先は切ない狂気。
    登場人物が抱えるトラウマが明らかになった途端
    それまでの場面が違ったものに見えて来る展開と
    時間軸をずらす構成が上手い。
    優しさには自己チューがもれなくついてくる感じの、3人の会話が絶妙だ。

    ネタバレBOX

    ケンジ(河西裕介)、ショウヘイ(小西耕一)、ミツコ(宍戸香那恵)の3人は同い年。
    バツイチのケンジにミツコを紹介して付き合うように勧めたのはショウヘイだ。
    二人は同棲を始めたが、ミツコは心配性なケンジの束縛にうんざりし始めている。
    だがケンジの心配性には深い理由があり、それにはケンジの元妻が関わっていた。
    一方ミツコにも大きな秘密があった。
    そして実はミツコのことがずっと好きだったショウヘイは
    ケンジと距離を置くミツコにある決意を打ち明ける。
    それがきっかけでこんなことになるとは思いもせずに…。

    セックスをめぐる深いトラウマが、人生に大きな影を落とす話。
    そのトラウマに触れずにいるうちは、優しい関係が保たれるのだが
    ひとたび過去の記憶が現実に重なると、もう制御不能になってしまう。

    簡単に打ち明けたり共有したり出来ない悩みは
    次第に歪み曲がりねじれながら何度となく反芻され、濃度が高くなっていく。
    異様な言動の最初のひと言は、さらりと“変なヤツ”程度に描かれるのだが
    後にあれが狂気の片鱗であったかと思うと戦慄する。
    時系列を入れ替えることで、行動の理由が後から判明するのがとても効果的だ。

    3人の、それぞれひとりよがりで思い込みが強く、
    思考の悪循環を断ち切ることができないキャラクターが際立っていて面白い。
    ケンジ役の河西裕介さん、繊細で優しく、妻を救えなかったことで
    自分を責めながら同時に自分以外を攻撃する複雑な表情が上手い。

    ただ3人中2人までもが、犯罪被害者又は犯罪被害者の家族であるという設定は
    ちょっとドラマチック過ぎて感情移入しにくい気がした。

    小西さんの書く脚本は、ひとり芝居でも相手の台詞が聴こえてくるようだった。
    二人芝居では現代のすれ違う会話が降り積もって行く様を描いた。
    三人芝居になったらぐっと空間が広がって会話が豊かになった。
    会話の“遊び”みたいな、空気感も含めてそのやりとりが可笑しくて笑った。
    笑った分、後半の“暴走する個人的行き場の無い感情”の怖しさが際立った。
    個人を掘り下げることで、繋がることが難しい孤独な時代が浮び上ってくる。

    当日パンフに“ワークショップオーディション”の告知が載っていたが
    次は“劇団ひとり芝居”的に人数が増えるのだろうか。
    相変わらず早々とタイトルも決定していて、次回7月の公演が楽しみでならない。

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    2014/02/27 00:46

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