満足度★★★★★
マレビトという希有な空間で…
この茅場町のマレビトという場所。確か看板らしい看板もなく最初来た時は、ほんとに此処なのかと何度も番地を確認しましたっけ。普段はリビングギャラリー&スペースと銘打ち 様々な古道具を展示(すべて、売り物)、雑誌の撮影にも使われる場所なのだそうで、しかもエレベーター無しの徒歩5階… と、なんだか愚痴っているわけではなく、大好きな場所、なのである。
この阿部一徳氏による一人芝居、初見。マレビトの 様々な顔の椅子、ソファーが 絶妙な間隔で置かれ、すなわち舞台装置 イコール マレビト。我々はどの椅子に座ってもどんな姿勢でもよく、その統制のなさ、自由さが実に心愉しい。待ちの間にアナウンスもないから気持ちをざわつかせる必要もない。
さて 唐突に 阿部一徳氏(構成・脚色・演出・演者)と 寺田英一氏(音楽・演奏)の登場。そういえば…みたいなゆるいおしゃべりのあと(今思うと、これが舞台前のチューニングのような役割を果たしていたと思う。このいかにもお肉大好きです!みたいな風貌の阿部一徳氏、我々に「筋を追うより、私を信じてイノセントに」とメッセージ。
一人芝居というより一人がたり、焚き火を前に村長(おさ)の話を聴いている気分にもなり もちろん筋など追いきれないが、長の語りの魔法、イメージが色が匂い臭いが拡がってくる、それが見えない霧のように場を覆い、そこにシテ・ワキの阿吽のタイミングで寺田英一氏の音が加わる、、いや加わるというより長の語りの一部となっている。
最初 私は 座禅のように 半眼にして、長の語りが次第にイメージとなってたゆたってくる感じを楽しんでいたが、次第に話の人物が長に憑依してくるのを見、何度も時間が止まった。
夢うつつ、催眠術にかかってしまった。宴が終わって…目覚め、やっと拍手(笑)。不思議な体験。