シーザーの戦略的な孤独 公演情報 ミクニヤナイハラプロジェクト「シーザーの戦略的な孤独」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    空(宇宙)への祈り
    われわれは永遠に孤独なのだろうか。


    「ヨーロッパ企画の本多力さんが、ミクニヤナイハラプロジェクトに出る」という情報を耳にして、「それは面白い!」という感想と同時に、頭の上に「?」が浮かんだ人は多いのではないだろうか。

    ミクニヤナイハラプロジェクトは、高速の台詞に、とんでもなく運動量の多い動きまで伴う独特の演出だ。したがって、本多力さんが、そんな勢いで台詞を話し、動いているところなんて想像できないからだ。

    しかし、本公演を観て、ミクニヤナイハラさんが彼を選んだ理由がわかった気がした。

    ネタバレBOX

    「ヨーロッパ企画の本多力さんが、ミクニヤナイハラプロジェクトに出る」という情報を耳にして、「それは面白い!」という感想と同時に、頭の上に「?」が浮かんだ人は多いのではないだろうか。

    ミクニヤナイハラプロジェクトは、高速の台詞に、とんでもなく運動量の多い動きまで伴う独特の演出だ。したがって、本多力さんが、そんな勢いで台詞を話し、動いているところなんて想像できないからだ。

    しかし、本公演を観て、ミクニヤナイハラさんが彼を選んだ理由がわかった気がした。


    舞台の上は、どうやら2030年の近未来らしい。
    しかし、今の未来というよりは、原子力を想起させるような、危険なエネルギーに影響を受けることのない、スーパーな人類が生まれているという世界であり、パラレルな世界観の中の話のようだ。
    放射能に耐性を持ち、しかも長生きの新人類の誕生なんていうのは、お伽話にしても、今の日本の現状から考えても冗談にしか思えないから。

    しかし、壁のこちら側にいるスーパーな人たちというのは、自分からそうなったわけではなく、「たまたま」そうだった、ということであり、現状の日本と考え合わせると、事故を起こした原発の近くに「たまたま」住んでいなかった自分たちと重なる。
    スーパーというのは、何かの能力というより、「たまたま」の結果なのだ。
    それは意外と重い。

    で、本多力さんである。
    スーパーな2人の男たち(1人は女性になっている)に対して、普通の、つまりノーマルな人類・シミズとして、本多さんは出てくるのだ。

    ここがポイントではないだろうか。
    スーパーな2人、オガワとヤマムラに対して、ノーマルなシミズの動きとの差がある(ように見えてしまう)。
    シミズ本人はまったく同じように話をし、動いていると思っているのだろうけれど、例えば、台詞を言うときの、シミズのどちらかというともっちゃりした感じに比べて、オガワとヤマムラはとてもシャープだ。

    ヤマムラを演じる光瀬指絵さんは、ミクニヤナイハラプロジェクトの常連さんというイメージがあるので、ミクニヤナイハラプロジェクトの世界にすでにしっかりとはまっている。
    オガワを演じる足立智充さんも、ミクニヤナイハラプロジェクトやニブロールへの出演経験もあるので、ミクニヤナイハラプロジェクトの世界には溶け込みやすかったのではないかと思う。

    対するシミズの本多力さんは、若者が普通の感じにぼそぼそとしゃべる(笑)、ヨーロッパ企画の中にあって、さらに独特の語り口調のゆるさがある方で、体型もややぽっちゃり型だ。しかも関西弁のイントネーションが残る台詞が柔らかい。ミクニヤナイハラプロジェクトには初登場。

    この役者が個性として持っている「差」は、具体的にスーパーとノーマルの演技をそれぞれつけるまでもなく、自然と立ち上がってきてしまう、「差」でもある。
    つまり、本多さんが登場して、台詞を言い、動き出してから、「なるほど!」だからこの役には本多さんだったのだ、と納得したのだ。
    リアルな凄い配役ではないか。

    同じような高速の台詞と過剰な動きを両者にさせても、イヤでも出てきてしまう「差」というものをじわじわと感じるのだ。

    さらに言えば、この作品には「笑い」も生まれている。
    これは本多さんならではの結果だと思う。



    話を作品そのものに戻す。
    前作の『see / saw』では全体をとらえていて、「その時」感が強かった。
    五感に響き、圧倒的な物量を感じた。

    今回は前回と同様に3.11をベースに描いているのだが、前回がマクロ的ならば、今回はミクロ的な視点からの作品となっている。

    つまり、「その後」の人々の「心」の問題を扱っているのではないだろうか。
    「壁の向こう」から「避難」してきて、こちら側での日常が始まっている。
    何かの作業をしている。
    ノーマルな人々にとっては、危険な作業であったとしても、スーパーな人々には何の危険もない。

    対して、ノーマルな人々は隠れるように暮らしている。
    匍匐前進をするように。
    彼・シミズは、「うざい」「きもい」などの矢を、これ以上受けたくないから、匍匐前進をしているという。
    そんな日常がある。

    しかし、3人それぞれの「存在の不安感」もある。
    ヤマムラは男性から女性になっている。
    オガワは自分の影に悩まされている。
    シミズは短い命を憂う。

    それぞれが、相手に自分の気持ちを理解してもらえない、という「孤独」の中にあるのではないか。
    そして、たぶん、「孤独」の理由(原因)は「壁の向こう側」にあるのではないか、と考えたのではないだろうか。
    だから、3人は、例えばシミズは死の危険があるのにもかかわらず、壁の向こう側に行こうとする。

    「自分探し」というと、少しアレだけど、自分の孤独から解放される何かを、そもそもこうなってしまった原因である、壁の向こうの世界に探しに行く。
    壁の向こうは、何か大きな災害・事故が起こって、誰もいなくなってしまった危険な場所。

    中盤から後半に向かって、3人の会話の量は徐々に多くなり、会話の速度も速くなっていく。さらにそれに伴い身体的な運動量も多くなっていく。
    つまり、実は「会話」の「運動量の多さ」=「会話の困難度の高さ」がアップしているのではないだろうか。
    それは、会話の量により、彼ら個々の「孤独」を取り巻く「壁」が取り払われていくのではなく、一層、厚く高くなっていく様子だ。
    彼らは、息が上がりながらも会話をしていく。
    さらにオガワが「影」に取り込まれる度合いも高まっていく。

    脚本は、ホントに凄いと思う。
    何気ない会話の中に、情報が詰まっているように感じる。
    「宇宙」「オーパーツ」「知識のある人ない人」等々。

    オガワは、空を見上げるのが好きだ。
    ロケットを見上げると、取り込まれてしまった影から解放される。

    ロケットでは、キャラクターがネギを振っている。
    舞台のスクリーンにはネギを振る姿がシルエットで映し出されている。

    その姿は、実は小さくて地上から見えないはずなのだ。
    しかし、オガワの頭の中には、その様子がはっきりと見えている。

    宇宙はもの凄い速度で膨張しているという、その様子を想像するだけで恐くなる。
    地上にいるちっぽけな自分が毎秒ごとに、さらにちっぽけになっていく感覚だ。
    だから、「宇宙」に希望のようなものを託し、空を見上げ、見えるはずのないネギを回すキャラクターを想像する。

    それは宗教的である。
    ネギを回している姿という滑稽さに宗教がある。
    空を見上げることは「祈り」である。
    救いはこの地上にはない。壁の向こう側にも、もちろんない。

    今ある危険への耐性が備わっている「スーパー(遺伝子)」は男性のみにしか出てこない。
    つまり、人類は先細りしていくことになる。
    スーパーは長生きできるらしいのだが、ノーマルがそのうち死に絶え、スーパーな男性の老人ばかりになっていく。
    それも寿命とともに徐々に少なくなり、最後はすべて消えて行く。

    寿命が長いということでの、恐ろしい「孤独」が待っている。
    それを考えるととても息苦しい。

    シミズの言っていた「オーパーツ」と「宇宙人」の話は、ここでつながっていく。
    つまり、つまりそれらは、われわれは宇宙で孤独なのではない。どこかに誰かがいるのではないか、という「証拠」であり、「期待」であり、「祈り」ではないだろうか。
    彼もオガワと同じように空(宇宙)に何かを託していたということなのだろう。

    ラストは自分たちが恐れていたモノに飲み込まれてしまう。
    オガワは、自問自答のように影と対話をしながら影に侵食されていく。
    シミズは死ぬ。

    ただし、女性となったヤマムラを待ち受ける先はわからない。

    孤独の中で祈りは続くのだろう。


    ……どうでもいいことだけど、
    ネギを回す、で思い出したことがある。
    数年前にネット(の一部)で流行っていたアニメだ。
    この作品とは関係ないと思うけれど。探してみたらあった。

    http://www.youtube.com/watch?v=GCO62VNm67k

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    2014/02/01 21:45

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