満足度★★★★★
これを完全な創作とみるか、どうかで・・
自分としては、この作品を観て、
イヴォ・アンドリッチの「エクス・ポント」を思い出したりした。
完全な創作としてみるなら、リアリティがなかった、という感覚も十分にあると思った。
ただ、こうしたわりと大きなテーマの作品と言うのは、
純粋に単独の作品としてよりか、
過去の先人たちの作品、別の国の歴史などを映し鏡にして、
想像力で補いながら観ると、演出家のこれからの可能性が見えてくる気がする。
上演時間90分。役者4人。
理想的と言って良いバランスだと思う。
・・ただ欲を言えばもう15分短ければなお良かったような・・
いつも思うのだけれど、物語は断片的で良い。
語り過ぎは良くない。
観客の想像力に委ねるのが良い。
そういう意味では、自分は、演出家の描写の手腕というよりか、
語りたい主題を持ちながら、
断片的に省略していく手腕にとても将来性を感じた。
作り手というのは得てして主題に愛着を持ち過ぎたあまり、
描写を過剰にしがちだと思う。
主題に愛着を持つのは良い。
ただし、演出家はその愛玩物に残酷にメスを入れ、
ミニマリズムに徹するよう努力すべきだと思う。
もっと子細に描写可能な物語を断片的に描写し、
役者を少数に絞ったのが感じられるのは、
関西の演劇では意外と少ない気がする。
もっと丁寧に描写すれば、
観客の自分が過去に読んだ散文に照らし合わせて
物語を咀嚼する行間は失われただろう。
人によって無星にもなれば、想像力を広げて楽しめる人には豊かな時間を提供できる
こうした小さな佳作は、
演出家にとっては危険な賭けだと思う。
小さいだけに危険を取り戻す幅は小さい。
ただ、逆にそれでもシンプルに徹しようとする姿勢は良いと思う。
役者たちも個性を出しすぎない演技が良いと思う。
こういうのは役者がオール女性でしか出来ないものだと思う。
男性が一人でも入ると出来ないものだと思う。
そういう意味でも演出家の手腕は光った。
声が聞こえないという話があったが、それは改善する余地があると思う。
ライブ等に行けばわかるけど、
人間の肉声がはっきりと届く範囲は意外と狭い。
人間は水分の塊だから、声を吸収してしまう。
あの会場でもそう。
あの声だとはっきり届くのは二列目まで。
自分は二列目に座った。
初めて観る劇団で三列目より後ろに座るのは実は危険だ(苦笑
慣れてくれば良いけど。
渋谷のルデコだとよくあるのだけど、
客席を取り囲むように配置するべきだったのは間違いない。
二列目までの配置にすれば十分に改善できると思う。
役者の声のせいではないと思う。
逆に声が大きすぎると不自然になったと思う。
致命的な欠陥ではない。
生音の楽器演奏などがあるともっと良かったけど、贅沢言い過ぎかな。