期待度♪♪♪♪♪
される側に愛があったなら…
『蛻皮表演』の看板役者といえば、蛸谷歩美さん ですね。
「少年役」では向かうところ敵なし の彼女ですが、主宰・相澤直樹さんの発行するメールマガジンには強気な女性像が浮かびます。「他団体の若手を説教」は日常だとか…。
30分間ほどの公演時間ですから、短編という制約を どうしても受け、役者陣も簡潔な演技を しなければなりません。注目したいのは、蛸谷さんの「脱少年」です。短髪な上、くっきりした顔立ちですから、制服を着ると もはや活発なサッカー部の男子中学生ですね。
その彼女が、「もう一人の隠された私」という劇団がもつミステリー色を交え、どう、明かされていく「真実」を辿るのでしょうか…。
実は、「ラブ・ストーリー」は落胆するケースが ほとんどなので進んで観劇しません。“恋人くらい周囲へ迷惑を与える仲”はないのに、多くの恋愛舞台だと、2人の主観を軸に描いてしまいます。つまり、観客からすると、男性は彼氏役に置き換えますし、女性は彼女役に自分自身を投影するわけです。
例えば、無人島にヤシの実が二つ転がっていたとしましょう。漂流した人間は3名です。そのうちカップルは一組でした。このとき、女性Aさん が一番早く発見し、残りの一個を分け与えるとすれば、彼氏か他人、どちらですか。
よく「命は平等」といいますが、ある人を守ったからこそ 別の人が犠牲になることもあります。
舞台を観劇しても、基本的に、自身を投影できれば恋人関係に酔える。ただ、主観ではなく、コメディでもなく、そうした“汚さ”(真実の優しさ)を扱う舞台が造られても よかったと思います。
相澤さんは、メールマガジンに こう記しています。
「人間は狡くて汚くて自分勝手だ。
だからこそ恋愛を通して自分の惨めさを目の当たりにしてしまう人間の姿を僕は見たい。
そしてボロクソになりながら力いっぱい拳突き上げて相手の名を叫ぶような芝居を書けたらいいと思っているのです」( 蛻皮表演mail magazine vol.18)
深い目標ですねえ!偏ったラブ・ストレートではありますが、蛸谷さん の直球演技が発揮されそうです。