幻夜 公演情報 観覧舎「幻夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 活かせなかった中野あき


    群像劇のような形式をとりながら、あるプレイボーイを軸に、恋仲の女性を描く夢想世界だった。
    そして、三股をかけていった人々すべてが同じく〈ふみ〉という名前を持つ。


    なぜ、この舞台は、手で触ることのできない空気感なのだろうか。
    時代設定も、いつの年代であるか、様々な可能性を醸し出す。
    例えば、BGMに流れたのは、ピンクレディー、松田聖子といった70年代の元祖アイドルだ。ご本人は未だ歌手活動を続けられ、ミニスカートを履く若さなので、それが「古い時代」とは言えない。
    ただし、時代考証的資料を読むと、70年代発表の曲であり、聴いていた世代からすれば「昔の時代」だろう。懐かしい。

    ネタバレBOX



    主人公・武はカラフルな色彩のジャージを着る。この姿は、70年代の風俗を表す。
    「ふみ」との会話でも、「東京ドームシティ 行ったこと あったのよ。二人で後楽園遊園地 行ったじゃない。その頃は18歳とかだったわね」といった趣旨の思い出話が咲く。東京ドームシティが開園したのは1988年。つまり、青春に二人で後楽園遊園地を訪れたとすれば、2人の幼少は70年代に思われる。

    なぜ、「幼少」を取り入れたのかといえば、始まりは男の子武と女の子「ふみ」だったからである。そのカップルは寝室で結婚を約束し合った。
    しかし、理解が及ばない。少なくとも、舞台の時代設定として、現代2014年は定まっている。
    これは、70年代に幼くして亡くなった「ふみ」が、「富士山」という名の展開から見下ろす構造だろうか。


    武が記憶喪失に陥っている疑いも濃い。単なる群像劇の形式ではなく、内面的断片性だ。これなら、時代設定が 腑に落ちないのも、その一言で説明できる。70年代を引きずり、誰が「ふみ」か解らなくなった悲しきプレイボーイ。



    私は、今まで示してきたが、時代設定は70年代に統一すべきだったと思う。映画『横路世之介』(2013年 公開)が後の現代をリアリスティックに、クールに設定するとおり、夢想世界を描く一方、それとは違う2014年であってもよかった。


    富士山の 裾野を、「ふみ」のスカートへ「同化しちゃった」構造は、解読すべきテーマである。武らは 富士山裾野で過ごすのだが、その森さえも、仮に「ふみ」による支配された「執念の空間」だとしたら…。
    女の夢想は世界遺産に登録したくない。

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    2014/01/12 23:45

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