「分断プレー」で耐久戦に持ち込む
「人狼ゲーム中毒者」、とうとう、天高く登る。
なぜ、ここまで、人狼ザ・ライブプレイングシアターは、私たちの(心)を喰うのだろう。同じパーティーゲームの一種である「人生ゲーム」を舞台化した時、そこに、「議論の占有」「裏切り」「仲間集め」「不敵な笑み」は絶対、現れない。
真夜中、大自然の森で、狼に噛みつかれた元•人間、現•人狼達は、やがて、魔法世界まで侵食するに至った。これが…魔女狩る(マジョカル)裁判である。
この舞台、ネタバレOKだから、開演中であっても、スマートフォンから「人狼ゲーム中毒者」に その模様を実況中継することが可能。劇場を越え、ネット住人まで、人狼の(獣臭い)唾液が飛ぶ。
結論から示せば、激戦の末、「人狼チーム勝利」であった。残る、その獣臭い唾液を辿った先には、可愛げな服装に身を包んだデイジーが いた。この…「赤ずきんちゃん」を見抜いた観客は、一人もいなかった。
つまり、パーフェクトは おろか、人狼三匹を見抜いた観客すら、0人。
通常だと、人狼正解者は10人前後いることを考えれば、その数字は「人狼中毒者」の顔を真っ青に変える力があった。
人狼だったのは、No.4デイジー、No.6エスター、No.8キャシーの三匹だ。同チームの狂人はNo.11パンジー。
このゲームは、〈誰が本物の「予言者」「霊媒師」か?〉をみつけることが、〈誰が「人狼」「狂人」か?」を判断するー適切なー材料である。ところが、霊媒師No.12ジンジャーが「私は処刑されてもいいわ」などと不可解な言動を繰り返し、「狂人」のようなインパクトを与えてしまった。これは、人間も含めた、魔女たちの総意である。「あなたを信じてるわ」と、人狼エスターへ向かい放ったのが他ならない霊媒師ジンジャーだった。
そして、 中毒効果を上げるポイントが、「人狼は狂人を知らない」「狂人は人狼を知らない」憶測効果。
人狼エスターは予言者を名乗り、本来は狂人であるパンジーを「人狼だった!」と断罪した。果たして彼女はパンジーが狂人であることを知ったうえで告げたのかは不明だが、チームが「人狼+狂人」であり、予言者に名乗りでたことを考慮すると、人狼エスターとパンジーは敵かもしれない可能性が高まる。
観客は、処刑されたジンジャーが本物の霊媒師だというプレミアム資料、すなわち残るパンジーは人狼か狂人である情報を与えられた。この時点で、「エスター×ジンジャー ライン」が連結しつつあったから、ジンジャーが本物だとすれば、彼女エスターも本物だという認識になる。
当然ながら、彼女の 言った「パンジーは人狼だった!」も正当性をもつ。
このミス論理が、多くの観客をはめた結果、「パンジーを人狼」とする回答が占めた。その後、パンジーは処刑されている。
もう一度 付け足す。
エスターは人狼、パンジーは狂人である。
分断プレーだった。
さらに、その壁建設は続く。
予言者である立場ゆえ求められたのは、「人狼疑惑の魔女を診ろ」だった。同じチームの人狼キャシーを総意として指名されたたのもかかわらず、あえて「人間だった」とは発表しなかった。
逆に、No.3モーラを「人間だった」と本当の発表をした。
2人の自称予言者が「人間判定」したため、モーラは唯一、「人間」として振る舞うことができた。ちなみに彼女は能力者であり、狩人だった。
しかし、分割された形の人狼キャシーは、「多数決の空気を占有する力」に傾き、(前日に処刑された)「私はエスターを信じるわ!」と語ったことで連携を疑われ、処刑された。人狼エスターが処刑されたのは、あえて分断プレーを強行し、「なぜ占わなかったか?」の疑惑が響いたからだった。
夜、人狼から喰われないことも一因だった。
私が「狩人」に選んだのは、人狼デイジーである。傍観的であり、決して当事者にならない。人間から「あなたは人間的だ!」と押されている。
これは「逆クリスパターン」だろう。議論を指揮して「多数派獲得」に動くのではなく、控え目に待つ戦法だ。残り5人の段階になると、彼女はNo.9ナタリー(人間)へ ピッタリくっつき、追随するアプローチに出た。
ただ、7名の段階から、二匹連続で人狼を処刑したことは、人間チームの快挙だろう。このような議論を進めたのがNo.10ドリス(人間)であった。
仮に その当日、人間を処刑していたら、人狼チームの勝利は決まっている。
三票という団体票を集め、残り1名の人間を惑わすと、それが可能だった。しかし、人狼エスターが予言者ではない事実は ほぼ明らかになっていたので、分断プレーを試みたのだろう。一匹は「私は信じるわ」を言い、一匹は人間チーム側に。
この枝分かれこそ、分断プレーである。
マジョカル裁判は衣装も煌びやか。
一方、女装魔女が 早々、処刑されるのは どうしてなのだろう。議論の中身より、「やりにくいわ!」という感情が そうさせたのか。
天に登りつめた人狼と魔女が、キュートな顔して魔法をかけてくれる。「人狼ゲーム」という魔法を。